第55章 再びましての煉獄家
「あげは。君は俺の妻になるんだぞ?
些か君は、千寿郎に甘い気がするんだが?
千寿郎は、俺の自慢の良く出来た弟だが。
だからと言って、浮気は許さん」
「あっ、兄上っ?
浮気だなんてっ、そんな。
そのっ、断じてその様な
間違いには至りませんので、ご安心下さい!
そ、それに、僕はそんなつもりではっ…」
そう杏寿郎の言葉に
千寿郎が慌てて返事を返して来て
「杏寿郎、男の嫉妬は見苦しいぞ?」
「杏寿郎さんは、心配性にあられます。
千寿郎君にその様な疑いを向けるなど…」
槇寿郎とあげはが呆れた様に
杏寿郎に対して口を揃えて言って来て
「だっ、だったら…その、
俺の事ももっと、普段から
存分に甘やかしてくれても…っ。
いいんじゃ、無いのか…?あげは」
はぁっと槇寿郎がため息を付いて
我が息子ながら呆れるとでも言いたげに
「馬鹿な事を言ってる暇があるなら、
さっさとふたりで瑠火の墓参りにでも行って来い」
そう言って 追い出される様に家を
摘まみだされてしまって
そのまま玄関で履物を履いて居ると
「あげは」
槇寿郎が玄関まで追いかけて来て居て
「如何、なさいましたか?槇寿郎様」
「これを…」
そう言いながら懐に手を差し入れて
懐から 2つ封筒を取り出しすと
あげはの方へ差し出して来た
「あげは。お前に。
瑠火への手紙を預けたいんだが、
お使いを頼まれてはくれんだろうか?」
槇寿郎のその言葉に驚いた様子だったが
差し出された封筒を見ると
すぐに あげはがその表情を綻ばせた
「瑠火様への、槇寿郎様からのお手紙。
こちらは、恋文にあられますね?
ええ、はい、勿論にあります。
お渡し、して参ります。槇寿郎様。
きっと、瑠火様も
お喜びになられるかと思います」
槇寿郎の手から
あげはがその封筒を受け取って
その表情だけ観て居れば
まるで 自分が
恋文でも受け取ったかの様な
そんな… 表情にも見えてしまって