第55章 再びましての煉獄家
「ええっ、
僕が…にありますか?…そっ
そんな…僕が、自分のお嫁さんに、
引き振袖を…、
あの写真の父上と母上の様に…。
そっ、そんな日が来るのでしょうか?
僕にも…、
はぁ、色々と考えてしまいました」
一瞬で色んな事を想像してしまった様で
赤く染まった両頬を冷ますようにして
千寿郎が自分の手で押さえる
「しかし、母上には何もかもお見通しに
あったのでしょうか?
俺が…あげはに、胡蝶の姉の
振袖を着せる募りにしている事も、
ご存じにあったかの様に
感じてしまいそうにある。
それに…鳳凰の柄は、
偶然に俺が白無垢に選んだのと同じ柄だ」
「杏寿郎。すまんが、引き振袖の
鳳凰の柄がいいと、
瑠火に言ったのは俺だが?」
杏寿郎と槇寿郎の視線がぶつかって
「えと、血は争えぬ…に、ありますね!
俺は間違いなく、父上の子にあるようだ」
そう言いながらも千寿郎は
ニコニコと穏やかな笑みを浮かべて
槇寿郎と杏寿郎を見ていて
槇寿郎がばつが悪そうに
少し無精ひげの残る顎に手を当てると
「蛙の子は蛙…とでも、言えばいい」
「あの、槇寿郎様。お髭が少々
剃り残されている様にありますが?」
「いいだろう?別に出掛けるでもなし、
お前に心配されずとも、
明日はちゃんと剃る」
「あの、槇寿郎様」
「今度は何だ?あげは」
「あの飾り棚のお写真、
拝見させて頂いても?」
「…好きにしろ」
「姉上、僕も見たいです」
あげはが立ち上がり
飾り棚に飾られていた写真立てを手に取ると
元々座っていた位置に戻って
千寿郎の方へ
見やすい様に写真を向けて見せた
「あの、父上。父上と母上の
後ろに映ってるのは、
この母屋…ですよね?」
「ああ、そうだ。俺と瑠火は
ここで祝言を挙げたからな。
あの頃は俺も忙しくてな、
祝言の為にとどこかに場所や
時間を改める事も難しかったからな。
それを思えば、
お前は中々に無謀な事をお館様に
申し入れたもんだとは…思って居るがな」