第7章 長い一日
余程 空腹だったのか
杏寿郎はあっと言いう間に平らげてしまって
おかわりを要求していた
「あまり、食欲がないのか?」
「うーん、そうですねぇ……、
バナナは置いときます」
そう言ってバナナを自分の床頭台に置くと
玉子粥とヨーグルトと
すりおろしリンゴを食べて
バナナをどうしようかと眺めている様だった
食事が終わる頃を見計らって
下膳にアオイと3人娘が薬湯を持って来て
俺とあげはの手に持たせた
「では、これが夕方の分です。後ほど、
寝る前のをお持ちしますので」
「でも、アオイちゃんこれ、
食後じゃないでしょー」
漢方薬なので
本来なら食前か食間に服用するものだ
「食後でも、効果がないわけではないので」
「それは知ってるよ、まぁ、服用回数
減らすより…いいかもだけど?急性期だしね」
くいっとあげはが不満を言ったのにも関わらず
一気に中身を飲み干すと湯呑みを返した
「時間経過としては、急性期でしょうが。
経過としては回復期でもいいかと」
あげはの言葉にアオイが返した
「あー、アオイちゃん。こっちの人には、
私が飲ませておくから…」
「すいません、お願いします」
「でしたら、寝る前の分の時に湯呑み、
もらいに来ますね!」
パタンとドアが閉まり 2人きりになる
「飲みますよね?杏寿郎さん」
「いや、…飲むには、飲むのだが…」
「じゃあ、ほら!頑張って下さい」
そっと杏寿郎の湯呑みを持つ手を
あげはが自分の両手で包んで
飲むように促して持ち上げる
「あげは」
「はい。何ですか?杏寿郎さん」
「俺は、薬湯は苦手だ」
「知ってますよ、
だからこうしてるんじゃないですか」
こうしてる?
俺に薬湯を飲ませようとする事のことか?
「服薬介助ですよ、ワンツーマンで
完全看護ですから」
「今の君は、看護者じゃなくて…
患者側だと思うのだが?」
「だったら、今は杏寿郎さん専属ですね」
と言って笑った
「それも、24時間付きっきりですよ?」
「それは、贅沢だな!
ならば、お願いしてもいいのか?」
「いいですよ?何ですか?」
「褒美をもらえると、嬉しいのだが」
褒美と言うと
苦手な薬湯を頑張って飲むので
ご褒美が欲しいと言う事なのだろうか?