第55章 再びましての煉獄家
「えと……、その、
ただいま戻りました。槇寿郎様」
「ふん、それでいい。
…お帰り、ぐらいは言わん事も無い」
そう言ってそっぽを向いたままで
槇寿郎が返して来て
「ち、父上。
あげはを誑し込んでおられるのは、
父上の方では?それに俺もまだ
父上より言って頂いておりませんし。
あげはの夫になるのは、
父上ではなく、俺でありますが?」
呆れたと言いたげな顔で槇寿郎が
杏寿郎の方を見ると
「杏寿郎。お前は
しょうもない事で文句が多い奴だな。
お前は昨日と言い今日と言い、
帰ったその足で、
望月の所に行っていただろうが。
それに、お前から帰ったと、
挨拶をしろと昨日も言った所だろうのに。
そんな事も、忘れたのか?杏寿郎」
「父上。失礼を致しました。
杏寿郎、只今戻りました!!」
屋敷の隅々までに
響き渡る様な声量で杏寿郎が挨拶をすると
「ああ。良く戻ったな、杏寿郎。
どうする?先に墓へ行くつもりか?
まだ、昼食には時間があるだろう?」
「父上、でしたら、
そんなお急ぎにならずとも。
先にお茶をご用意致しましょうか?
兄上も姉上も馬車に、
長く揺られてお疲れなのでは?」
すぐに瑠火の墓参りに行くのかと
槇寿郎が確認して来て
千寿郎がお茶を飲んで一息ついてはと
そう提案して来る
「ああ、それでしたら。
今日は、さつまいものプリンと
スィートポテトを
用意して来ておりますので。
先に、瑠火様にお供えをしてから、
皆で食べませんでしょうか?」
「でしたら、
その間にお茶を用意して参ります」
そう言うと千寿郎は
台所の方へと下がって行って
「では、父上はこちらでお待ちを。
母上にあげはと、挨拶を済ませたら。
すぐこちらに戻りますので」
「そうか、なら好きにしろ」
「少しの間、
失礼をさせて頂きますね、槇寿郎様」
「別に構わん、さっさと行け」
あげはが声を掛けると
気恥ずかしいのか顔を逸らされてしまった
「あげは、行こう」
「ええ、そうですね。杏寿郎さん」
居間を後にして
杏寿郎と共に仏間へと移動する