第55章 再びましての煉獄家
玄関で杏寿郎が履物を脱いでいると
バタバタとこちらへ
駆けて来る音が聞こえて来て
「お、お帰りなさいませ。兄上っ!!
それから…姉……上っ、は…?」
そこに居たのは杏寿郎だけで
あげはの姿がない事に気付いた
千寿郎が問いかけて来る
「うむ、昨日も会ったばかりだがな。
あげはは、すぐに来るぞ。
ただいま。千寿郎。父上はおられるか?」
ガラガラと玄関の戸が開いて
杏寿郎の後から
後れてあげはが中に入って来る
「杏寿郎さん。少しお荷物を運ぶのを
お手伝いして頂きたくあるのですか?
せめて、こちらの、お花位お持ちください。
貴方のお母上にお渡しする分にありますよ」
「あ、姉上。私が手伝います」
「そうか、千寿郎頼んだぞ。
俺は望月と話をしてくる」
杏寿郎はそう言って 自分だけ
さっさと先に行ってしまって
千寿郎は昨日と同じ兄の行動に
呆れつつもらしいと感じてしまっていた
「あの、改めまして…。
おかえりなさい。姉上」
にっこりと満面の笑みを
千寿郎が浮かべて出迎えてくれて
「……うん、ただいま。千寿郎君」
その千寿郎君の天使の様な笑顔に
数秒見惚れてしまっていて
返事をするのが遅れてしまって居た
「あ、僕がお荷物、お運び致します。姉上」
「うん、ありがとう。ごめんね?
千寿郎君は優しいね。きっと
将来、素敵な旦那さんになるよ。
きっと千寿郎君の奥さんになる人は
幸せ者だもん、こんな優しくて
細やかな旦那さんだもんね」
かぁああっと
千寿郎が顔を真っ赤に染めてしまって
思わず可愛いって
言いたくなってしまったけど
年頃の男の子に可愛いは失礼よね?やっぱり
「いえ、でも、やはり女性は。
兄上の様な男らしい頼りになる様な、
男性がいいのではないのでしょうか?
その、僕みたいな頼りない感じの、
なよなよしてる男では
嫌われてしまうのではないのでしょうか?」