第54章 忘却の果ての追憶
あげはから返って来たのは
予想外の意外な答えだった
「だからと言って、日輪刀を置くのが
絶対でもありませんでしょう?
そう怖い顔を
なさらないで下さい。杏寿郎。
そう言った意味ではありませんから。
私とて、身重の身体で鬼殺をするとは
当然、言ってはおりませんよ。
身が重くなれば、
この戦い方は出来ませんし。
流石に、それは杏寿郎だけでなく
お館様も槇寿郎様も
お許しは下さいませんでしょうから」
身籠ったとしても
日輪刀は置かないと
それが絶対ではないと
あげはが言って来て
「隠と共に、事後処理は主に
今までも指示をする立場でしたので。
それを続けるのは、身重の身体でも
問題はないでしょうし。
自分がもつ術を、後継に
教え伝える事は出来ますでしょう?
それに、身軽になれば、
今まで様に、また鬼も狩れますから」
あげはのその言葉に
杏寿郎が驚いた顔をしていて
「あげは、それは…君は」
「仕事の量も制限をすれば、
子供との時間も取れるはずにあります。
子供を他人に預けて、鬼狩りに
明け暮れたいとは言っておりませんよ?
時間はあるなしではございません、
ないは只の言い訳にございますから。
ないなら、在る様に作る物にあります」
ね?とあげはがにっこりと笑って
「選べないのであれば、
選ばなくてもいいのです。
私は、両方、欲しいです。杏寿郎。
そうありたいと思いました。
どちらかだけを選んでも、私も
そして、杏寿郎。
貴方も後悔ばかりにありましょう?
だったら、選びません。
両方を選びます。私は」
要するに
母は鬼殺隊…と言う事なのだろうか
「確かに君が大人しく、
家で俺の帰りを待っていてくれるとも
どうにも想像が付かないと思って居たんだ。
だが、いいのか?あげは。
そのどちらも選ぶと言う事は」
どちらかだけの道よりも
困難を極める事になるのは
少し考えれば分かる事
「ええ、勿論に。私はそのどちらにも
妥協は致しません。ですから杏寿郎は
私にそれが手に負えないと判断した時は、
貴方に私を止めて頂きたくあるのです」