第54章 忘却の果ての追憶
「一人の女性として、あげは。
君を愛している。
それは紛れもない事実だが。
だが、君のその柱としての実力を俺は
高く買っている。剣士としてもだが、
それ以外にも君は……鬼殺隊にとって
必要な存在であることは確かだ。
この先の戦いが、困難を熾烈をより
極めるのなら、君の力は必要だからな」
そう言う俺も俺で
ひとりの男である
煉獄杏寿郎としての葛藤と
鬼殺隊の炎柱である
煉獄杏寿郎との葛藤の間で
答えの見つからない
悩みに迷うだけにしか過ぎない
「一度君に、
その判断を委ねて置いて。
自分でも恰好の
付かない事をしたと思って居る」
ふふっとあげはが杏寿郎のその言葉に
自分の口元を押さえて笑うと
「ああ、すいません、
笑っては杏寿郎に
失礼にありますね。いえ、でも…。
杏寿郎が、お悩みであるのではないかと
そう感じたのが、その通りにありましたので」
杏寿郎が木々の間から
青い空を仰ぎ見る
「あげは、俺と共に生きてくれ」
それはどっちとしてとは言わずに
それだけを彼女に伝えると
鬼殺隊として生きても
女として生きても
彼と 杏寿郎と共に生きる事には
何ら違いは無くて
「杏寿郎。
正直な所、私にも選べません。
私も杏寿郎も機能的に、女性として
男性として正常であるのなら。
そうすれば、そうなるのが自然にあります」
男と女が 身体を何度も重ねて居れば
子を成す募りがあるなしは
置いて置いたとしても
そうなるのが 自然なのだと
あげはが言って来て
「そうしないのであれば、
そうならない様にと、何かしらの
対策をこうじる必要があります。
しかし、
自然に天に全てを委ねるのであれば。
それも、不必要にありましょう」
「しかし、…だな。あげは。
そうなってしまえば。
君の、鬼殺隊としての人生は
この先、閉ざされる事になるんだぞ?」