第54章 忘却の果ての追憶
君に惹かれて引き寄せられた
哀れな 虫の末路…にも思えなくもない
だが だからと言って
あげは 俺は君の手を離すつもりも
諦めるつもりも
身を引くつもりも…ないがな
「あげは。君に降りかかる災いの火の粉も
俺が全て、払って…焼き尽くすと誓おう。
だから、俺を信じてついて来てくれるか?」
大きすぎる程の 大きな重圧でしか無いが
彼女をその運命から守れるのは
俺にしか出来ない事だからな
三上透真がそうしていた様に
俺がそう出来るかじゃない
三上透真にも出来なかった事を
俺はせねばならない
「はい。勿論にあります。
頼りに…しております、杏寿郎。
貴方を…あげはは信じております」
そうだ あげは
君が俺を
信じてくれれば信じてくれるだけ
必要としてくれれば
必要としてくれるだけ
頼りにしてくれれば
頼りにしてくれる 程に
俺はもっと 強くなれる
今よりももっと 強くなれるんだ
そう どこまでも 強くなれるから
「あげは、その君からの信頼に
必ず俺は応えよう。
だから……、君は。俺の傍らに
落ち着いてくれると嬉しいのだが?」
「杏寿郎は、まだ……お悩みですか?」
鬼殺隊として生きる 幸せと
母親として生きる 幸せと
私にそのどちらを選ぶのかと委ねたその理由
「だが…、あげは。
俺は正直決めかねている。
君は…これほどまでに強くなった。
今の君と俺となら、2人でも上弦が討てると
俺に確信を持たせる程に強くなっている。
だからこそに、同時に迷う……。
君を俺の元に留めてしまっていいのかと、
鬼殺隊の本願……に、君の力は必要だ。
竈門少年をきっかけとして、今まで
姿をくらませていた上弦の鬼が現れる様になった」
一旦 杏寿郎が言葉を区切ると
真っすぐにあげはの顔を見据えて来る