第54章 忘却の果ての追憶
「前に父に聞いた話なのですが、
キリスト教に置いて。
死した後に訪れる場所に、
煉獄と言う場所があるのだそうです」
あげはの言葉に杏寿郎が驚いた様にして
目を丸くさせて
「俺は、生粋の日本人で仏教徒だから。
キリスト教とは無縁だと思って居たが…」
ー 煉獄 ー
「煉獄…、プルガトリウム
……天国と地獄の間にあると言う、
中間の世界にあります。
人はそこで生前に犯した罪を
煉獄の炎に焼かれて、
浄化されるのだと言います」
「ハハハハッ、俺の炎は人は焼かんがな!
俺の炎が焼くのは、
悪しき所業を繰り返す鬼だけだ。
罪だけ焼くなど、
生焼けにするつもりもないしな!
骨まで鬼を焼き尽くすまで!」
くすくすと杏寿郎の言葉に
あげはが笑い出して
「杏寿郎の炎に焼かれてしまっては、
骨すらも残らないと言う事にありますね?」
「煉獄の炎は優しいかも知れんが、
この炎柱、煉獄杏寿郎の炎は、
そんな生半可な温度ではないからな!」
「なら、私も火傷所では
済みそうにありませんね?
杏寿郎の炎に焼かれてしまっては、
大惨事になってしまいそうにありますから」
「ん?どうだろうな?なら……
君がその身体で確かめてくれるか?
俺の炎に焼かれるとどうなるのかを…な?」
ふふっとあげはが杏寿郎の言葉に
自分の口元を押さえて笑うと
「杏寿郎の炎は、身だけ焦がす様な
生半可な温度ではないのでありましょう?」
「その身を焦がすだけで、
まだ温いと君が言うのなら。
あげは、君の身も心も全て
俺で焼き尽くしても構わないとでも?
君は中々に恐ろしい事を
言って来るな、あげは」
「飛んで火にいる夏の虫
……とも言いましょう?」
飛んで火にいる夏の虫…か
だが どうだろうな?あげは
俺が君を焼いて居る様に見えて
俺が君に焼かれている様にしか
感じなくもないがな