第7章 長い一日

「少し、お時間を頂ければ…。何とかなると
…思いますけど」
「胡蝶、助かる。恩に着るぞ！」
「お礼は、事が済んでからでいいですよ
…でも」
「でも…？」

「あげはさんと煉獄さんの助けになりたい
人は…私の他にも居るのでは？」

胡蝶以外に…俺やあげはの助けになりたいと
思っている人物…

「あげはさんも、煉獄さんもお一人で
何とかしてしまう方なのでこんな時くらい、
人に頼ってもいいのでは？」

こんな時…くらい…か
言い得て妙だな

「あ、そうそう。大事な事を
言い忘れる所でした」
「どうした？胡蝶」

「それまでの間、彼女と深い仲になるのは、
お待ち願えませんか？
煉獄さんには、…お気の毒ですけど、
事情が事情ですし…仕方ありません」

気の毒とは口で言っているが
全然気の毒そうでもなければ　むしろ…

「気の毒そうに…、見えないが？」

「そうですか？気のせいです。私は、生殺し
にされる煉獄さんに同情してるんですよ？」

生殺し… 確かにそうとも
言えるかもしれないが
胡蝶もそれに　一枚噛んでいるのでは？と
杏寿郎はそう思った

「お可哀想に…、お辛いでしょう？私が思うに
あの時の煉獄さんは、そうでもなかった
でしょうけど、今の煉獄さんは、あげはさんが
食べたくて仕方がないのでは？」

どうしてなのかは知らないが
胡蝶には俺の感情が筒抜けになっているのか？
胡蝶が俺のそんな感情を見抜いているくらい
あげはが俺のそんな感情を…
感じとってくれたら…

「胡蝶、君も、相当意地が悪いぞ？
そんな俺を…こんな所に入れるんだからな」
「あら、心外です。でしたら、別のお部屋を
ご用意しましょうか？君もって事は、
あげはさんにでも…意地悪されたんですか？」

「本人はそんなつもりはないみたいだがな！」
「ああ。あげはさんは、天然小悪魔ですから…
お気の毒に…」

今までの表情とは違ってしのぶが
杏寿郎を本当に同情する目で見て言った

天然小悪魔… か　言い得て妙だな　
無自覚ほど　恐ろしいものはないな…
そして俺は… 生殺しに合うのか　当分の間…
それもまた　恐ろしい…話だ

「竈門少年達はどうだ？」

「今は良く休んでますよ。
お二人の無事をお伝えしたら、安心した
みたいですけど」