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その恋は琥珀糖のような【鬼滅の刃】【煉獄/救済】

第54章 忘却の果ての追憶



「大丈夫か?あげは」


そう声が上から 降って来て


その声に あの時の記憶の続きが蘇って来る



『……ッ、大丈…夫?、あげはちゃん』



そうか あの時

そうなる寸前の所で



透真から透真さんに戻ったんだ



知らぬ間に目から零れていた涙を

透真さんが拭ってくれて

いつものあの穏やかな笑顔を見ると


一気に緊張の糸が切れて


わんわんと大きな声を上げて

透真さんの身体に縋りついたままで
大声を出して泣いてしまって居た

『ごめんね?あげはちゃん。
大丈夫だった?
取返しも付かない様な酷い事…、
しちゃう所だったね。
でも、もう、アイツは出て来ないから…。
僕がちゃんと、抑えたから。
もう、大丈夫だよ?安心して』

「でも…、透真…さんっ、
腕…から、血が……」

彼の左腕からはドクドクと勢い良く
出血してるのが見えて
彼がもう一人の彼を止めるのに

日輪刀を突き立てたのだと言うのは

その傷を見れば 分かったのだけど

「傷の手当…しないと……ッ」

『うん、でもこれは
僕が自分でしたやつだから、
できたら、君のお父さんには
内緒に……して欲しいんだけど?』

「だったら、私が縫う!
その傷…私に縫わせて。お願いっ!
やり方だったら、父さんが
してるの見てるから知ってるから」


見ていて手順を
知ってるだけだったから


実際に傷を縫合したのは
その時が初めてで

手袋だって 使う器材だって

私の手にはどれも合わずに大きくて

兎に角 時間が掛かったし


大凡 綺麗と呼べた様な
縫い方では無かったのだけども


だからきっと 痛かったんだと思う

麻酔をかけたりも しなかったから



透真さんの方も

でも それも我慢してくれて


痛いって言わずに待ってくれていて


『はぁ…、出来た…ッ』


やっと 縫い終わった時に


お礼 言ってくれたんだ


あの穏やかな笑顔で



『ありがとう、あげはちゃん。
あげはちゃんは、きっと、
将来は立派な
看護婦さんになれるよ』




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