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その恋は琥珀糖のような【鬼滅の刃】【煉獄/救済】

第54章 忘却の果ての追憶


「あげは。身体の傷は癒えても…、
心の傷はそうすぐには癒える様な物では無い。
数年、数十年と掛かる人も居るんだ。
中には一生、それが癒えないままの人だって
少なからず存在している」

杏寿郎が一旦言葉を区切ると
静かにあげはの顔を見つめて来る

「君がそれをあの時に、
患者とその家族に対して出来なかった事を。
責める必要はない、君は薄情でも何でもなし。
現実に普通の隊士よりも、忙しい
それこそ寝る間も惜しむ様な、そんな
生活をしていたんじゃないのか?」

「……私の、あの夜の記憶は……、
師範が…塞いでくれていました。
私がそれを、
思い出そうとする度に、何度も。
ですから、私は知らずにして
忘れたままにして
暮らしていたのです…しばらくの間は。
思い出してからも、すぐには行けずにおりました」

ギュッとあげはが自分の身体を抱きしめる


「あげは。それは君の師範が
そうすべきだと判断しただけの事だ。
君の師範は、思い出させないままに
して置きたいと考えていたのかも知れんがな。
まぁ、その辺りの事は、
君の師範にしか分からない事だからな。」


向かいに座っていた杏寿郎が
あげはの隣に移動すると
ギュッとあげはの身体に腕を回して
包み込むようにして抱きしめて

そっとその杏寿郎の手が
あげはの背中を撫でおろして来る


だが あげはは …彼女は

その塞がれた記憶を取り戻している

自分にはその記憶が必要なのだと
強制的に忘れさせられていた記憶を

沈んでいた記憶の海から
探し出して 
自分の手で引きずり出して来たんだ


「すまない。あげは。
話したくないのなら…無理には」


無理に辛い思いをして
その事を話さなくていいと
杏寿郎があげはに言って来て


「いえ、でも…あそこに居た…皆を
憶えて居るのは、私だけ…にありますから。
これから先も、憶えて居られるのもまた。
私だけにありますよ?杏寿郎。
辛くないと言えば、嘘になりますが。
私にとって、大切な
記憶であり思い出にありますので」


「いいのか?聞いても…」


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