第53章 期待の募る夜には… R-15
後ろから 抱きつかれているから
背中に柔らかい あげはの身体の
感触を感じてしまって
スルスルと胸板から腹筋へと
滑り降りて来て
「杏寿郎がなさったように、こちらを
特に念入りに…洗って差し上げても?」
そう お返しだとでも言いたげに
あげはがこちらへ言って来て
下腹部から更に下の茂みの方へと
滑らされるあげはの
その手を杏寿郎が掴んだ
「いや、それは中々に…。
俺としては、
…嬉しい申し出ではあるんだが」
「杏寿郎?」
スルッと後頭部に杏寿郎が
反対側の手を回して来て
こちらに身体を捩じって振り返って来ると
「そうして貰うよりも…。
あげは、いいだろうか?」
「少しだけ…に、
ありますのであれば…。構いませんよ?」
そのままお互いの唇を重ねた
「んっ…ふっ、んっ…」
合わせていただけの
口付けに 知らぬ内に熱がこもると
合わせた 唇の間から
吐息と共に声が僅かに漏れ出る
「んっ、…あの、杏寿郎…。
口付けばかりしていては、
その…っ、身体が冷えてしまいます」
「なら、湯船の中で…だな?」
杏寿郎が洗いかけていた
身体をさっさと洗うと
一緒に入ろうと促して来て
「一緒に入ろう、身体が冷えるだろう?」
「確かに、そうなのではありますが…」
一緒に浸かったまでは良かったが…
「さっきの続き…は、どうだ?」
「ダメです。なりません、杏寿郎。
今から、ご予定がおありなのを
お忘れにあられますか?」
そう あげはに釘を刺されてしまって
口付けを更にしようとしていたのを
顔を逸らされて躱されてしまう
「それに…、あまり入浴に
時間が掛かり過ぎてしまっていては、
心配されてしまうかも知れません…ので」
「あげは…、もう少しだけ…」
クイッと逸らされていた顔の
顎を支えて上を向かせると
そのまま 唇を重ねられてしまって
それこそ こんな事を湯船の中で
繰り返していたら 今度は
のぼせ上ってしまいそうだ…
「もう、お先に上がらせて頂きますっ」
ざばっと湯船から上がって
さっさと杏寿郎を残して
あげはは脱衣場に戻った
顔…熱い
お湯にのぼせたのか
杏寿郎にのぼせたのか…どっちやらだ