第53章 期待の募る夜には… R-15
「今夜の杏寿郎は、甘えたにありますね」
ムッとあげはのその言葉に
杏寿郎が顔を顰めると
「悪いか?
そう言う…、気分なんだ。今日は」
「いいえ。
悪くなんてありませんよ。杏寿郎」
杏寿郎は全裸だけど
私は下は下着は履いたままだけど
殆ど全裸に近い状態ではあるから
こうして お互いの腕を絡めて
抱き合えば お互いの肌と肌が触れ合う
お互いの体温と 肌の感触
愛おしいと想う相手の匂いがして
その腕の中にいる 現実に安らぐ
「こうしてると、…心地いい…し、
酷く安心する…んだ……」
「杏寿郎…」
ぴったりと身体を寄せ合って
幸せな気持ちで満ち足りた気分のまま
眠りに落ちて行った
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ピチチチッ
チュン チュン…
部屋に朝日が差し込んで来て
鳥のさえずりが聞こえて来る
朝… か
ぼんやりとぼやけたあげはの
視界に 見知った部屋の天井が映る
その天井が見えていた景色を
覆い隠す様に にゅっと黄色い影が現れて
「おはよう。
あげは、目が醒めたか?」
そう 上から声が降って来て
こちらを満面の笑みで見つめている
杏寿郎と目が合った
ぼんやりとしていた 頭が
一気に覚醒して行って
「杏寿郎?先に起きておられたのであれば
お声をお掛け下されば良かったですのにッ。
えと、おはよう…ございます……」
「うむ。おはよう!あげは。
まぁ、それはそうなんだが。
俺の腕の中で、穏やかに眠っている君の
寝顔を見れるなんて、この上ないからな。
起こしてしまうのが勿体なさすぎて、
眺めずには居られなかっただけだ」
一体 この人は どれくらいの時間
私の顔を眺めていたのだろうか?
そう疑問に思わずには
居られないのだけども……
「どうした?あげは。顔が赤いが?」
「きっ、気のせいにあります、杏寿郎」