第7章 長い一日
「わぁーん!あげは様ぁー良かったですぅ」
「あげはさん、心配しましたぁー」
「うわぁーんっ!おかえりなさいですー」
「みんな、ごめんね。
…心配かけちゃって、ただいま」
両手を広げて3人をまとめて抱きしめる
ふと顔を上げると 柱の影から
こちらを見ている カナヲと目が合って
カナヲが俯いてしまった
「あげは…姉さん…、お帰りなさい」
とカナヲが小さい声で言った
今 カナヲが私の事…姉さんって
今まで あげはさんだったのに
“あげは姉さん”って
「うん、ただいま。カナヲ…。
カナヲもこっち、アオイちゃんも」
3人娘に気を使って 少し離れていた
アオイを呼んで
柱の影にいたカナヲも呼び寄せると
2人を左右の手でそれぞれに
ぎゅっとしっかり抱きしめた
暖かくて 優しい手
カナエ姉さんとも似てるけど
あげは姉さんの手も…とても心地いい
それに 呼び方
いつもはカナヲちゃんだった
私が あげは姉さんって呼んだから…
嬉しい…
あげはの抱擁を噛み締めるように
カナヲは目を閉じた
その様子をしのぶは
少し離れた所から見守っていて
意外なカナヲの行動に少し驚いていた
あげはさんはカナエ姉さんに
面差しが似ている
似てる所を探してしまっていたのは
私もだっただろうし
カナヲもだったのかもしれない
あげはさんの口調…
昔は姉さんによく似ていた
でも 今のあげはさんの口調は
姉さんとは 全然違っていて
…それはあげはさんが
自分に重ねられないように…
してた事だろうと…
考えても仕方ありません
今のカナヲにあげはさんが
かけがえの無い存在になった
それに違いありませんし
「先に、ご案内しますね?」
しのぶが感動の再会を
邪魔しても悪いと思ったのか
蚊帳の外の俺に気を遣ってか
声を掛けてきた
杏寿郎を病室まで案内しようと少し歩いて
「アオイーー、それが済んだらでいいので、
あげはさんをお部屋までご案内して下さい」
しのぶの言葉が引っかかった
私を部屋に案内する?
ここには私の私室があるのだ
しのぶがこちらを見て
ニヤニヤと笑っている
あの笑顔を何かを企んでる時の笑顔だ