第52章 蝶の悩みと晩御飯
「けど…その、決して杏寿郎の
その気持ちに応えたくないとか…と言う、
意味では決してない…のです。
そうなりたいと言う、想いも気持ちも…、
それに、何より…願いでも…あるのです」
「なら…、あげは。
俺と約束してほしい」
そっと杏寿郎の手が
あげはの頬に触れて来て
杏寿郎の手の平から
彼の体温が伝わって来る
「すぐで無くていい。
いつか…でいい。あげは。
俺の子を産んでくれるか?」
「杏寿郎…。ええ、私もいつか。
そうなる日が
…来ればと、願っております」
ちゅうっと杏寿郎が頬に口付けてくれて
そのままギュウッと抱きしめられる
「杏寿郎…、私…ッ、今…とても
幸せだと感じておりました。
貴方と出会えた事、今こうして
共に在れる事、そしていつかの未来の事も
その未来を思い描くだけで、幸せな
気持ちに心が満たされる様にあります」
「俺も幸せだが。
もっと、欲張りたいがな!
思い描くだけでない、現実に俺はしたい。
あげは、俺と共に生きて欲しい」
そう言って その腕に包まれて
ギュウウっと抱きしめられてしまう
その 少し痛いと感じる位の
抱きしめてくる力加減も
また あげはの胸の中に
彼への愛おしさを募らせて行くのには
十分過ぎる物だった
あげはが瞼を閉じて
杏寿郎の身体に自分の身体を預ける
「ええ。勿論にあります。杏寿郎」
「あげは。俺が風呂に行く前に…、
少しだけ…いいか?」
そうこちらに問いかけて来る
杏寿郎の目に
熱が揺らいでいるのが見える
「杏寿郎…?」
その熱い視線を
注がれているだけで
見つめられている場所から火傷を
してしまいそうにも
感じ取れてしまっていて
突然に訪れた
二人きりの夜に…
期待が… 自然と知らず内に募る