第52章 蝶の悩みと晩御飯
「うむ、そうだな。
例えばの話ではあるが、あげは。
もし、君がこのまま鬼殺隊を続けたいと
言う事であるのならば。
もう一年…子供を設けるのは、
待って欲しいと君が言うのなら。
俺は、待つつもり……で居るのだが?」
待つ…つのりもあると
杏寿郎は口では言っているが
どちらでもいい…と言うのはきっと
彼の本音と言うよりは
私に対する
遠慮の様にも感じられてしまって
「あの、気に掛る…のですが」
「その顔を見れば、分かる。あげは。
君には俺の考えなど、お見通しの様だな。
君の思って居る通りに、俺の心は決まってる。
だが、そうするのが2人でも、
産むのは君だ。その事で、
我慢や制限を強いられるのは、
俺ではなく、あげは。君の方だからな。
だからこそ、俺の想いや希望だけを
君に押し付ける訳にも行くまい?」
ジッとあげはが
杏寿郎の方を見つめて来て
杏寿郎が望んでいる方が
どっちかなのかと言う事は
あげはにも十分に理解する事は出来た
「私は、杏寿郎と、
貴方と共に在りたい…のです」
そうなってしまえば 当然に
一人の身体でも一人の命でも
なくなってしまうのだから
一緒に任務に赴くのも難しくなるだろうし
杏寿郎を始めとする 周囲が
それを私に許してくれるとも思えない
私は私として
杏寿郎と共に在りたい
でもそれは鬼殺隊の
あげはとしてなのか
それとも
ひとりの女としての
あげはとしてなのか
貴方と共に在りたいと願う
あげはの言葉の意味を杏寿郎は
自分の胸の中で噛みしめていた
「ああ。分かっている。君のその気持ちも
言葉の意味も、俺は理解してるつもりだ」
ギュッとあげはが杏寿郎の
着流しの胸元を掴んで来て
杏寿郎の胸板に自分の額を押し当てて来る