第52章 蝶の悩みと晩御飯
「本当は2人には当日まで
内緒にしておくつもりだったのですが。
カナヲがそこまで悩んでるならと、
言っちゃいました」
「しっ、しのぶ様。それは本当ですか?」
そうしのぶの言葉に普段は冷静な
アオイが食いついて来て
「え、ええ。本当です。
私達が、あげはさんを
あれだけ説得しても、
成人式で着てくれなかったあの振袖を。
あげはさんが着て下さるんですから、
これ以上喜ばしい事はありません。
悔しいですが、流石…煉獄さんですね」
カナヲは言葉にはしないが
それを嬉しいと感じているのは
しのぶの目には見て取れて居たので
「と言う事ですので、カナヲは
安心して、あげはさんから貰った
あの訪問着にしたらいいのでは?」
うんとカナヲがしのぶの言葉に
大きく頷いて
「分かりました。そう…します」
「ええ、きっと
あげはさんも喜びます。
ああ、でも一度、皆を引き連れて。
呉服屋に行かないとなりませんね。
私が…あの振袖を着るのは、
成人式よりも
先になってしまいましたが。
皆にも振袖を、用意しなくては…」
「え、あ…その…」
アオイがしのぶの言葉に
珍しく取り乱してしまっていて
「ええ。アオイ。そのまさかですよ。
皆の振袖を
用意しないと…なりませんね」
「あのッ、私…、
カナエ姉さんの振袖…がいい」
自分の意見を言わないカナヲが
はっきりと意思を表示してきて
しのぶも思わず面食らってしまったが
それから ふっと笑顔に
しのぶの顔が変わって
「見てみますか?カナヲ…、
姉さんの振袖は、
私が数枚預かっているので」
「あの、しのぶ様。
私もお着物は結構にあります。
あげは様が成人の時に着用したのを、
あげは様から私にと、
お譲りして頂いている物がありますので」
「そう言えば…、
あげはさんがご自身の
成人式にと仕立てていた振袖は
藤色から紺に地色がなっている物でしたね。
その色合いなら、あげはさんにも
アオイ、貴方にも似合うでしょうから」