第51章 喧嘩の後は…
「ですからに、
ありますのでしょう?杏寿郎。
私が、これを抵抗なく受け取れる様に
わざと多めに購入する素振りを見せたり。
訪問着や、色留袖まで準備させようと
なさったのでは?全く…、杏寿郎は
憎い人にあります…ね。敵いません。
憎過ぎて、愛おしいばかりにありますよ」
ハハハハッと杏寿郎が笑い出して
「だが。俺のそれも、全て。
君には、お見通しの様だがな!
だが、俺は…、ゆくゆくはそれも
君に贈りたいと思ってるんだが?
だから、
その為…と言うだけの物でもないが…」
荷物を蝶屋敷から引き上げて来た
この年齢の女性の持ち物としては
彼女の荷物は極端に少ない気がして
必要最低限…と言う印象を受ける
「杏寿郎…は、もう少し…ばかり、
財布の紐を締めて頂いても?」
「俺の…、金遣いが荒いとでも?」
じとっとした視線を
あげはが杏寿郎に向けて居て
「その口ぶりにあるのでありましたら、
無自覚…なのでしょうが。
まぁ、その大胆なお買い物のなさり様も、
杏寿郎らしく……は
あるにはありますが…ね?」
「そう…なのか?あげは。
あまり考えた事が無かったが、
君がそう言うのなら、
そうなの…だろうな。
あげは、だが……その時は…、
素直にそうされては
貰えない…だろうか?」
杏寿郎が ゆくゆくは
煉獄の五つ紋の入った
黒留袖と色留袖を贈りたいと
そう 私に申し入れてくれて
そのいつか…の 時が
来る事を願わずには居られない
「はい。杏寿郎…、その時にはまた…」
「ああ、勿論、その時にも
俺が見立てるつもりでいるからな!
君に極上の、着物を贈らせてくれ」
「もう、杏寿郎は…。
やはり少々、財布の紐を
締めて頂きたく……御座いますが?」
そう杏寿郎に嫌味を言ったのに
当の杏寿郎の方は
こちらを見て
穏やかな笑顔を浮かべていて
杏寿郎の後ろには
赤い夕陽が沈みかけているのが見えた
「俺に君の夫としての、細やかな
楽しみを許してくれないか?」