第51章 喧嘩の後は…
「あげは。俺が君からのそのお願いを、
断れるとでも思って居るのか?
断る理由が、俺にはないがな!
そうか。そう言って貰えるほど
喜ばしい事はないぞ?あげは。
いいと、言う事…なのだろう?」
「いいと言う事…?」
着物を選んで欲しいと言っただけなのに
いつになく色気のある様な
そんな口調で杏寿郎が返して来たので
思わずあげはは聞き返してしまっていた
「俺の選んだ、
着物を身に纏うと言う事は。
あげは、君が俺の好みに、
その身も心も染まってくれる…と言う
意味だと俺は捉えたのだが?」
身も心も…杏寿郎の好みに染まる…?
どうにも 目の前の杏寿郎には
私がそんな意味なんて
考えもしないで言っただけなのに…
とんでもない方向への
あらぬ解釈をされてしまっていて
「ちっ、違いますよ。杏寿郎。
私は、そう言った
意味合いではなくて。
私は、普段は着物はほとんど
着る機会がないものでして。
参考までに杏寿郎の、意見を
お聞きしたかっただけにあります」
そう あげはが自分の言葉の
真意を杏寿郎に説明すると
どうにも
彼の方は私のその言葉が
腑に落ちないとでも
言いたげな顔をしていて
「ふむ。いつもながらに、君は
どうにも素直じゃないらしいな」
「……まぁ、
杏寿郎が思って居る様な
意味合いが…、
幾ばくか……位にはある…。
かも知れませんけど…。
あったと致しましても、その……。
あくまでも、幾ばくにありますから。
そうに……、ありますので。
杏寿郎に置かれましては、その辺りの
勘違いをなさりませんよう……に」
「君の幾ばくかが如何ほどか、
俺としては知りたい所ではあるが…。
君が、その辺りをどうしても、
濁したいと言う事なのであれば。
それはそれで、
俺が勝手な解釈をするだけだが?
それでもあげは、君はいいのか?」
言い逃れに言い逃れを重ねて
その意味をぼやかしてはみたが
杏寿郎の方は そうするなら
都合のいい解釈をすると
許可したと言う意味に取ると言って来て