第51章 喧嘩の後は…
「もう…いいんです、それは…。
それに、餅を焼いていたのは
杏寿郎だけでなくて、私もでしたので…」
そう居心地が悪そうに
あげはが言いながら
視線を泳がせて居て
「俺が餅を焼いて…、何の事だ?
別に餅を焼いた覚えはないが。
ん?ああ、ヤキモチか。
嫉妬していたと言う事か?
ん?今、君は自分が
餅を焼いていたと言ったか?」
今度はむっと口をへの字に曲げて
じっとりとした視線をあげはが
杏寿郎の方に向けて来て
への字に曲げた口を尖らせる
「随分と、
若くて可愛らしいお嬢さんに
迫られておられたとお聞きしましたが?
杏寿郎、私は歳は取れても……、
若返る事は出来ません故…」
「君がどう話を誰から聞いたのか、
俺には分かりかねるのだが、
あげは。君が心配に及ぶような
事は何もないぞ?誤解なんだ」
「いいんですよ。杏寿郎。
私は、怒ってなんて居りませんから。
時に、杏寿郎は、
うどんはお好きにあられますか?」
「店の主人が、
君と約束をしたと言っていたぞ。
俺は、君がその主人との
約束を受けてくれた事。
何よりも、俺は。
喜ばしいと思ってるんだが?
一緒に、
うどん食べに行こう。あの店にいつか」
ふふふとあげはが笑って
「いつかではありませんよ、杏寿郎。
近い内にです。それも、必ず…、
に、ありますでしょう?」
「ああ。そうだな。そうしよう。
あげは、君も随分と
言うようになったもんだな」
そう言って杏寿郎も自然と
笑顔になっていた
「杏寿郎の影響にありますよ」
「それはいいんだが、あげは。
俺はその、君が餅を
…焼いていたと言う部分についてだな、
もっと詳しく、君の口から話を
聞きたいとそう思って居るんだが…。
それに……、
聞いてしまったと言えば、俺もなんだ」
じっと杏寿郎があげはの顔を見つめて来て
「聞いてしまった…と
仰られますのは?」
「ああ、あの店の
常連客の男性に会ったんだろう?
その男性がだな、その…。
君が俺と団子を食べるのに、
店に行って…団子を食べずに帰ったんだと」