第50章 団子屋事変
そう言いながらも
視線は焼けて行く団子から
主人は離す事もなく続ける
「あげはさんもあげはさんで、
またお客さんとは別のお考えで
あっしと約束してくれやしたが…。
あっしが、こんな事を
言えた義理じゃねぇが。
お気をつけて下せぇ、
あっしは…待っていやすんで。
お客さん…、
いや、煉獄さんと、あげはさん
ふたり揃ってうちにうどんを
食べに来て下さる日を、待ってまさァ。」
どうか ご無事でと
その言葉が俺に いや 俺達に伝えて居て
ますます 死ぬに死ねないと
杏寿郎は感じてしまっていた
こうして 繋がって行くのだろうな
人と人が
想いと想いが… 繋がって行く…のだな
そう思うと
やはり 人と言う生き物は
何と美しくて
それでいて 愛おしいのだろうかと
そう感じずに居られない
堪らなく 愛おしく
それでいて 尊いのだと
元よりそう 感じてやまなかったが
あげは…と居るとそれが
今までよりも一層に
俺の目に映る世界が
キラキラと眩しい程に輝いて見えて
より一層 強く
俺の心を揺さぶるのだ…な
愛おしいと… 思う気持ちが
自分の胸を満たす感覚…
俺の ”世界”の中心は
いつの間にやら あげは
君の笑顔に変わってしまって居た様だが…
それも それで
また 堪らなく愛おしいと感じるのだから
「やはり、俺は…どうしようもない様だ」
そう自分に呆れつつ杏寿郎は
満更でもない笑顔を浮かべた