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その恋は琥珀糖のような【鬼滅の刃】【煉獄/救済】

第50章 団子屋事変


あげはがその話をすると
店の主人は驚いた様子で

自分の目頭を手で押さえながらに
深々とあげはの方に頭を下げて来て

「なんてこったい…、俺ァ、何と
お礼を申し上げたらいいのやら…。
知らずにして、鬼狩り様には
娘の命だけでなく、心まで…救って
頂いていたたぁ、礼の言い様もありゃしねぇ」

ふふっとあげはが自分の口元を押さえると
笑い出してしまって

「そうにありましょうね、
お二人には軽くではありますが、
私の極めて個人的な判断で
記憶を薄める感じの暗示を掛けましたから。
しかし、杏寿郎さんが鬼から
娘さんをお助けした事がきっかけで
私が塞いでいた記憶が蘇ったのでしょう…が」

ふっとあげはがその表情を曇らせる
俯いて地面に視線を落としたままで
話を続ける

「身体の傷は…時間と共に癒えます。
でも、心の奥に深く付いてしまった傷は
そう簡単には消えませんから…。
お礼は要りません、かつて私も
そうして貰った事で、心を救って貰ったので」


あの時の あの夜の記憶は

師範が塞いでくれていた

私に 暗示を掛けて

あの夜の出来事の記憶を薄めてくれていた

私の心が 壊れてしまわない様に…と


「でも、私に暗示をかけた人が
話していた、話ではありますが。
暗示が自然に解けてしまう時には、
その人が自分の力で、
それを乗り越えられるだけの、
準備が出来た時だと。
そう、私の師範が…教えてくれましたので」

そう一旦あげはが言葉を区切ると
その時の事を懐かしむかのように
目を細める

「ですから、ご主人が記憶を戻されたのも
それが、原因かと。辛い記憶は
忘れたままの方が、知らないままの方が
思い出さないままの方が、幸せなの時もあると。
私がそれを、呼び覚まそうとする度に
暗示をかけ直していたから、大変だったと
散々師範からは、悔やまれましたが…」

「あげはさん…」


「オイ、あげる。
これやるっ。いいから食えッ」





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