第50章 団子屋事変
ゴボゴボと水面に
気泡が上がって来て居て
ゴボゴボと 勢い良く上がって来て居た
その 気泡が…段々と その勢いを失って行って
その手が水面から見えていたのに
空を掴む様にして藻掻いていた
その手を掴んで引っ張ろうとした時
武ちゃんの手が
私の手をはたいたんだ
そうしようとするのを拒むようにして
ズズッ…と少しずつ
その手が 沈んでいて
そして 見えなくなった
池の水が見る見る内に赤く染まって
恐ろしくて私は
その場で気を失ってしまっていた
「アンタは死んだんだと、
そう思ってたよ。
私も、あの人も、絶望してたんだ」
その時 池の中から
緑の何かが飛び出して来て
ボタボタと水をしたたり落としながら
全身にコケの生えたそれは
河童の様に見えたが
皿や甲羅はなくて
河童のフリをした鬼だと気が付いた
その時にその鬼の首が後ろから突然
何かによって切られて
ポー―ンとボールの様に跳ねて
首が飛んで行くのが見えた
ゴロゴロと首が地面を転がって行って
声が聞こえた
『あの、
このお子さん達のご両親の方ですか?』
まだ年幅も行かない少女だった
彼女は鬼狩りをしていると話していて
この蛍池の件を調査していたと話した
『残念ですが、男の子の方は、
一足遅く、間に合いませんでした。
申し訳ありませんでした。
鬼に食われてしまっていて、
亡骸は頭しか残っておりませんでした。
こちらのお嬢さんに関しては、
気を失ってるだけですから。ご安心を』
そう言って抱きかかえていた
気を失っているいすゞを
こちらに向かって差し出して来て
父親の腕にその身体を託した
「その子をどうするつもりだ?」
いすゞの父親の問いかけに
地面に転がっていた子供の頭を
その少女が拾い上げて手に持つと
『こちらのお子さんのご両親の元へ、
頭をお返しに
今からお伺いするつもりですが?
お手数ですが、こちらのお子さんの
お家をご存じでありましたら。
お教え頂きたいのですが』
そうさも当然だと言いたげに
こちらに言って来たのを憶えて居る