第50章 団子屋事変
「ああ、餅は焼くのか焼かないのかは
選べるし、両方も出来るぜ。
姉ちゃんがどっちにするかなんざぁ、
俺は知らねぇが。
姉ちゃん。団子屋行って、
団子食わないで帰るつもりなんだろ?
海老天の兄ちゃんも
男前の兄ちゃんだったが、
姉ちゃんも随分と粋じゃねぇかい。
こりゃ、いすゞちゃんには悪いが。
アンタとあの海老天の兄ちゃんの間には
どうにも
隙がなさそうじゃねぇかい。じゃあな」
そう言ってヒラヒラと手を振って
その男性は
こちらに背を向けて歩き始めて
ピタッと足を止めてこっちを向き直ると
「姉ちゃん、いい女だぜ?
俺もかみさんが居なかったら、
惚れちまう事だった。自信持ちな」
そう言って
ははははと大声で笑いながら
その男性は行ってしまって
はぁーーーっと
あげはが深くため息を付いた
「どうしたんだぁ?
あげる、変な顔して」
「うん、まぁ、いいのよ。伊之助には
まだ、分からない話かなぁ」
「でも、いいの?あげはさん、
団子わざわざ食べに来たのに?」
わざわざここまで団子を食べに来たのに
団子を食べないと言い出した
あげはの行動の
意味が分からないと言いたげに
善逸があげはに尋ねて来て
「うーん、
でも、何となくにだけどね。
今、食べちゃったらダメだなって。
そう思うから、
今はお団子は止めとこうかなぁって。
ごめんね?二人とも。
折角、美味しいって
オススメして貰って置いて。
こんなところにまで疲れてるのに、
付き合って貰っちゃったのにね」
「でもまぁ、俺としては。
それ聞いて安心したかなぁって」
善逸が自分の頭の上で腕を組んで
あげはの方へ向き直って来て
「はぁ?紋逸、
お前、ふざけてんじゃねえぞ。
お前がややこしい事言っといて、何で
んな事言うんだよ?変な奴だなお前」
善逸の考えている事が
分からないと言いたげに
伊之助が言って来て
「でも、善逸君はどうしてその話。
わざわざ、私に話したの?」