第49章 日と炎と
槇寿郎の言葉に杏寿郎が
顔を上げると真っすぐに前を見据える
正面を真っすぐに見据える
その 視線の先には
ここではない どこかが見えている
かの様に
槇寿郎の目には映った
前に家で アイツと療養しに来ていた
あの時から コイツも
杏寿郎もまた
成長した…様だな…
それも これも
あげはの所為なのか
あげはの為… なのか
柱としても…だが 男としても…
「ええ、彼も三上透真との戦いに
参加する予定です。無論。
こちらが強制した訳ではなく、彼の意思で」
「杏寿郎」
「はい、何でしょうか?父上」
「彼を、死なせるなよ?」
槇寿郎がそう言うと口の端を曲げた
「無論。元より俺も
そのつもりにありますが…」
そう杏寿郎が言葉尻を濁して来て
「まだ、何か…あるのか?杏寿郎」
「父上。その事については。
俺がどうこうするまでもない事だ。
竈門少年は弱くない。
今度の戦いおいて。
彼は更に、多くを得て強くなるでしょう。
むしろ、三上透真との戦に置いて。
彼の存在が俺やあげはを、
救ってくれるかも知れない。」
「竈門炭治郎、
始まりの呼吸の隊士…か。
俺も黒刀の剣士は
実際には、初めて見たが…。
彼が、お前の元に来たのも…、
皮肉か、運命か、
何かの因果なのかも知れんな。
炎柱の手記には、始まりの呼吸には
継承者は居なかったとあった…。
だが、現にここに
その始まりの呼吸とも呼べる、
ヒノカミ神楽と言う物の
使い手が存在していて。
その上、黒刀の剣士…。そしてあの
耳飾り…、偶然では済むまい」
話し込んでいる間に
あれだけ濃くて底を上から
窺い知る事が出来なかった
自分の湯飲みの中の
緑茶が底に沈殿していて
その底が 槇寿郎の目にも
窺い知る事が出来る様になっていた…
この 湯飲みの中の茶の様に
今までの俺には見えなかった物が
ある日 突然として
見える様に なる事も…あるんだな…
今の俺に見えても遅すぎる…と言う…のにな
いや 違うか
今の俺だから 見える…様になったんだな
ふぅっと一つ その冷めたお茶を啜ると
槇寿郎がため息をついた