第7章 長い一日
「お見苦しい…、姿をお見せしてしまい。
申し訳ありません…でした」
布団の中から声が聞こえた
「一体、急にどうしたと言うんだ?
出てきてくれないか?」
「イヤです!…こんな恥ずかしい、姿。
お見せできませんっ!」
バサッ 布団を無理やり剥ぎ取られて
顔を隠そうとしたのを手首を掴まれて
制止されてしまう
「きょ、杏寿郎…さんっ?」
「俺は、君の夫になる男だ。気にする必要も、
恥ずかしがる必要もない!」
「杏寿郎さんが良くても、
私が、良くないんですっ…ダメですからぁ」
恥ずかしさに頬を染めて俺の視線から
逃れようとする姿…を見ていると…
「君のせいだぞ?」
「へっ?」
「君が、可愛らしい事ばかり
言うから…悪いんだ」
何が何だかわからないが
私が悪い感じに…なってる?
「素顔を見られるだけじゃ、済まないかも
しれないぞ?」
「じゃあ、…何が見たいって
…事なんで…すか?」
「俺としては、君がもっと…
恥じらう姿を見たいがな!」
と満面の笑顔で杏寿郎が言った
「あげは」
笑顔だった顔が真剣な表情に変わる
名前を呼ばれて視線を合わせると
スッと 頬に手を添えられて
顔を撫でられると
指の腹であげはの唇に触れて
「あげは…、構わないだろうか?」
もう一度 名前を呼んで
唇に当てていた指をそっと軽く押し当てた
彼が…望んでいる事は わかる
「ダメ…だろうか?」
コンコンとドアをノックする音が聞こえ
体を慌てて離して
それぞれのベットに横になる
程なくして隠が入って来て
刀鍛冶の里から代刀が届いたのと
馬車の手配ができたと知らされる
隠の手を借りながら
馬車へ乗り込む時
ふと 思った事があった
代刀が届いてなかったと言えど
胡蝶が居たのだ…
胡蝶の馬車に乗って
蝶屋敷で待っても
良かったのではないかと…
胡蝶なりの気遣い…だったのであれば
また改めて礼をしなくてはな
と杏寿郎は考えていた
「あげは、君はそっちじゃなくて。
こっちだ」
ここと言われ
向かいに座ろうとしたのを
止められて隣に…じゃないな これ
ピッタリと寄り添っている
あの時の列車のシートよりも
広くて余裕があるのに…