第48章 嵐、束の間の静けさのち嵐 後編
『フフフッ、面白い。
私は元水柱だぞ?あげは。
水柱に成れなんだ中途半端な、
出来損ないのお前の水の呼吸なぞ。
見ててあくびがでそうだ、ハエが止まるぞ?
お前は馬鹿だが、…お前のそう言う
馬鹿さは…、嫌いでもないがなっ!』
あげはの流流舞いに
同じ様にして師範も流流舞いを重ねて来て
お互いの流れが
お互いの生み出した水流の間を
スルスルと縫って伸びて行って
ほんの僅かに
ぶつかりながらにバシャっと跳ねて
微かな白波を立てる…
そうでありながらに 流れゆくのだ
剣撃と剣撃を合わせているのに
スルスルと捌かれて行く
いや正確に言うと
お互いがお互いの剣撃を
流れるままに捌き合っているのだが
恐ろしい程に軽い
手応えがまるでない 捉え所がないのだ
「ふんっ、やぁ!はぁあああっ!」
「やぁあああっ!」
ガキィンッ
お互いの日輪刀がぶつかって
日輪刀にしっかりとした
重みを初めて感じた
ガチガチとお互いの刀身が音を立てて
鍔迫り合いになる
芯と点をお互いが捉え合って
力が完全に均衡して
フッ…と周囲を囲んでいた
2人を包む水の流れの渦が消えてなくなる
その後に残るのは
静かすぎるまでの 静寂
その一瞬が
たまらなく 長く感じる
その静寂の中で
サラ…と 師範の艶やかな
水色の長い髪が流れるのが見えて
その左耳の金色の耳飾りが輝く
師範は…水の精霊か何かなんじゃないかって
そんな風にすらも感じてしまうほどに
浮世離れした…空気を纏っていて
透き通る様な 白い肌に
青い瞳の整った顔立ち
その青い 透き通る石清水の様な双眸の
右目から 感じる 無機質な違和感
ガラス玉の様にも見える
くすんだ瞳