第48章 嵐、束の間の静けさのち嵐 後編
スゥウウウッ
聞こえる 水の呼吸の音ッ
それに ビリビリと
肌を刺激する程の殺気
その殺気に反応して
全身の毛穴が逆立っていくのを感じる
その気配は 私が居る この高さよりも
更に 上空ッ
慌ててあげはが上を見るが目には
その姿は小さくにしか映らない
どこまで上なの?
来るッ
『水の呼吸 漆ノ型 雫波紋突き・天竜』
無数の波紋を伴う突きが
空中に5つ 波紋を広げて
その波紋から 水流が広がり
渦を成して行く
ザァアアっとその渦の中から
巨大な竜が産声を上げて
その竜が 大きな口を広げながら
こちらに食らいつこうと向かって来る
それも 豪速で…だ
「水の呼吸 玖ノ型 水流飛沫・乱」
水流飛沫で足場を作り
落下を抑えてその高さにとどまり
日輪刀を構える
忘れもしない… 忘れようとしても
ずっと 忘れられないでいた
あの時の 師範の 言葉…
ー優しすぎるから
お前は鬼狩りには向いてないー
師範の元に 弟子入りを志願して
修行を開始してから
3日後に言われた言葉だ
『どこを見ている?私はここだぞ?
頭だけじゃなくて、目まで呆けてるのか?
柱まで登り詰めたから、と言って
調子に乗るな。馬鹿弟子。
上弦を退かせた位で調子に乗るな、
馬鹿弟子。だから、
馬鹿なお前はその程度なんだ』
師範の姿は水の竜の中にあり
目には映らないが
声だけは ハッキリと聞こえる
馬鹿弟子 馬鹿弟子って
馬鹿にしないでッ…よ
馬鹿馬鹿言いすぎッ
「私は馬鹿じゃありませんッ!
いつまでも、あの時のままじゃない!!」
『一度自ら柱を辞めて置いて…、
何故今頃になって柱に…、
それに縋り付く?あげは。
お前は何も変わってなど、
おらんと私は言ってるんだ。
昔と変わらず、甘ちゃんのままだとな』