第47章 嵐、束の間の静けさのち嵐 前編
そうその勢いに
杏寿郎が返答を返せずにいると
そのまま団子屋の奥さんが続けて
「この団子は、
さっきあの顔ぐらいしかない
娘をかばってくれた礼だよ。
遠慮せずに食べな。
後、こっちは、さっきの詫びさ。
そこの黄色い頭の兄さん、
前にうちの子を
助けてくれた鬼狩りさんなんだろ?」
「あの時は、娘を救って下さって
ありがとうごぜえやした」
そう言って団子屋の主人も
杏寿郎に対して頭を深く下げて来て
「アンタ、団子、もっと焼きな。
まだ餡子のも、
ずんだもの出してないからね」
「いや、その奥さん…
お礼にも詫びにもどうにも多すぎる気が…」
「すいません、お茶を…どうぞ」
「ああ、すまない」
いすゞの手から杏寿郎が
湯飲みを受け取り時につんと
指の先が触れて
カアアァアアッと
先程自分から抱きつくと言う
大胆な行動に出た娘さんとは
思い難い様な
随分と初心な反応を見せる
「……酷いっ、どうして、お母さんは
私の味方してくれないの?」
そう言ってむぅっといすゞが
むくれッ面をして見せて
「何って、相手が居るだろうさ。
兄さんの顔見たら、分かるよ。
アンタみたいな小娘がパッと出て
どうこうなる相手じゃないよ。
そんな事も分からない様じゃまだまださね。
だったら、本人から聞けばいいさ。
いい人が居るのかどうかをさ」
「あの…煉獄様…、煉獄様には
将来をお誓いになられた方が居られるんですか?」
その自分の母親の言葉が
信じられないのかいすゞが
杏寿郎にそう問いかけて来て
「ああ。居る!
君には申し訳ないが、
俺は彼女以外の女性と一生を
添い遂げるつもりはなくてな…。
悪いが、君を妻として娶る事は出来ん」
「そう、…でしたか…」
それ以上の言葉を
いすゞが紡ぐことが出来ずに
そのまま俯いてしまった
その目にはじわっと涙が浮かんでいて