第47章 嵐、束の間の静けさのち嵐 前編
「おかあちゃん、
言ってやってくれるんじゃねぇよ。
いすゞは俺の中じゃあ、
誰が何と言おうと、三国一に決まってらぁ」
親の目からの色眼鏡こそはあれども
その いすゞと言う名の娘は
こうしていすゞを目当てに通う
常連客が居るのも納得の行く
くりくりとした大きな目が特徴の
可愛らしい顔立ちをした娘で
その染み一つないキメの細やかな
その肌には
桜色の頬紅がほんのりと淡く差されていて
あまり化粧っけこそは無いが
若い娘特有のはつらつとした
健康的な美しさがあり
後ろで結い上げた髪は
項に後れ毛が数本あり
その隙のある雰囲気もまた
若い娘特有の健康的な色気を
感じなくも…なくも…ない…のか?
炭治郎は難しい顔をしながら
いすゞを見ている杏寿郎の様子を
後ろから眺めていて
煉獄さん 多分 あのいすゞって人と
あげはさんの事を比べて
失礼な事を考えてるんじゃ…ないかな?
そう考えている 炭治郎は炭治郎で
そのいすゞの顔をぼんやりと見ながら
自分の妹である禰豆子の方が
いすゞよりも 数段に
可愛いし美人だとそう考えていた
パンパンと母親が
その手を叩いて払うと
「何だい、お前さんは
いすゞには甘ちゃんだねぇ。
だったら、
まだまだ尻の青い小娘でしかないよ。
惚れた腫れたの話なんざぁ、
アンタにはまだ早いよ。
アンタには、
団子がお似合いってもんだよぉ。
さっさと団子にタレつけて持って来な!」
「は、はいっ、只今ッ」
母親のその威圧感に
いすゞが逆らう事が出来ずに
慌てて店の中にもどると
タレに漬けた団子と
上に味噌を乗せた団子を持って
戻って来る
「気の利かない子だねぇ、
団子食うんだ茶が居るだろう?
違うかい。
すまない事をしたねぇ、お客さん。
うちの娘が、世間知らずで
迷惑をおかけしちまったねぇ。
悪く思わないでおくれよ?」