第7章 長い一日
しのぶに言われて
隣のベットに目を向けると
すうすうと寝息を立てて
あげはが眠っていた
「良かった、彼女も無事だったんだな!」
「あら?何をおっしゃってるんですか?
明確な外傷や内臓の破裂がなかっただけで
内臓のダメージが大きかったんですよ?」
しのぶの視線が怖いほど
鋭くなっているのを感じた
「その状態であそこから、ここまで
煉獄さんを担いで呼吸を酷使するなんて、
自殺行為です!!」
そうか やはり俺の思った通り
彼女の方も命に関わるほどの
重症だったか
「…ーーーんで」
「どうした?」
「何で、ちゃんと守って下さらないんですか!
大切だって言ったじゃないですか!
あげはさんまで…失ってしまったら、
私が…」
普段は声を荒げて
自分の感情を露わにしない
しのぶが感情のままの
言葉をぶつけて来た
俺を 殺しでもしていたとでも
言うのだろうか?
「すまない、胡蝶。俺も…
止めはしたんだがな」
「あげはさんが、言う事聞いた
試しなかったんじゃないですか?
それにそうしてたら、
煉獄さんはここにはいません」
「それもそうだな!彼女は
俺の命令に何度も違反したからな!」
胡蝶の話によれば
俺はあの後9時間にも及ぶ手術を受けて
その介助に入ると言ったあげはを
胡蝶が薬で無理矢理 強制的に
眠らせた様だった
「つくづく、
運の良い人ですね…、煉獄さんは」
「俺がか?」
「後、数センチ、…3いえ、2センチ
鬼が貫いた位置がズレていたら
死んでいたでしょうし、
それにあげはさんがここを事前に
押さえてくれていた事。
すぐに手術ができる状態で
貴方の受け入れができた事…。
そして何より夜が明け切れてなかった事
も大きいかと」
俺の命がここにあるのが
様々な幸運が重なった結果なのだと
胡蝶が説明してくれた
「まだ、ありますよ?」
人差し指を立てて振るとしのぶが笑った
「まだあるのか!」
「先程、夜が明け切れてなかったと
言いましたよね?貴方の体を貫いていた
鬼の腕が、なくなっていたら…」
「俺は出血で、死んでいただろうな!」
とても一時的とは言えども
生死の狭間を彷徨っていた
人間とは思えない
張りのある口調で言った