第47章 嵐、束の間の静けさのち嵐 前編
あげはが脳内であの時呉服屋で選んだ
色打掛の反物を思い出していて
あれを…羽織るのか…
「えっと、そのー、春日さん?
実はですね、選んでいる色打掛が、
かなりインパクトがある物でして。
下が白ならまだしも、
柄に柄を合わせてしまっては。
私…の方が、
衣装負けしてしまいませんかね?」
「あら、婚礼の衣装なんて
着てしまった者勝ちでしょう?
主役なのですから
目立ってナンボではないですか?
後、春日が、
炎柱様にご意見を致しまして。
わがままを一つ、
ドレスを仕立てている仕立て屋に
追加でお願いをしておりますので。
オーガーンジーであれば、和裁よりも
洋裁で仕立てる方が宜しいかと。
あげは様は、
当日のお楽しみにして下さいませね」
ふふふふと春日が笑って
「え?ちょ、私の知らない所で
一体何をお願いしてるのですか?
教えてくださいッ春日さん」
「内緒です。でも仕立て屋さんは
とても、お喜びになられてましたよ?
腕が鳴るとかで、何せ今までに
無かった注文だと仰ってましたので。
お二人の結婚式が春日は今から
楽しみにあります。
きっとあげは様にも
お気に召して頂けると思うので」
自分の知らない所で
結婚式その物が
とんでもない 方向になっている
そんな気がして仕方がないのは
私の気のせい…ではないはずだ
「え、っと…春日さん?」
「きっと、
あげは様の事にありましょうから。
春日が、炎柱様の言い出された事で、
その友人や仕立て屋回りで迷惑を
掛けてしまったのではとご心配を
なさっておられるのではないですか?
だから、お詫びの意味を兼ねての
虎屋の羊羹と最中でしたのでは?」
「え、ええ、
お礼とそのお詫びを…と思いまして」
「いいえ!でしたら、春日には
なんのお気遣いも結構にあられますよ?
もう、春日はそのお詫びに、春日の
独断と偏見で、趣味丸出しの
注文を付けさせていただきましたので!!
春日のご用意した物はきっと
あげは様を
当日により美しくして下さると
信じて疑っておりませんので!!」