第47章 嵐、束の間の静けさのち嵐 前編
「皆まで言われずとも、分かっている!!
君と不死川との間には、
その様な男女の関係は無いと、
言いたいんだろう?」
むっと杏寿郎の言葉に
今度はあげはが
口を尖らせてムッとすると
「ですから、
何度も何も無いと私はずっと
言ってるじゃないですか!
何を言っても、その疑いが貴方の中で
晴れないと仰りたいのであれば。
どうぞ、お好きに好きなだけ疑って
下さって結構ですので。
私は知りませんからね?」
「だから俺が言いたいのはそうではなく、
君の口からそれを…だな…その」
歯切れの悪い勢いのない
口調で杏寿郎がそう言って来て
「知りません、聞こえませんし?
さっさと、ご用事にお出かけに
なられたらどうです。炭治郎君が
ずっと、待ってますが?杏寿郎」
「む、それもそうだな。
なら俺は行って来る。
帰って来たらこの事については、
ゆっくり話す事にしよう」
「話す事は…ないつもりですが?
どうぞ。
……いって来て下さいませ、…杏寿郎」
「ああ、行って来る」
何となく気まずい空気を感じていて
杏寿郎の返事もよそよそしいし
こっちもこっちで
それに対して意固地になって
随分と可愛げのない棘のある返事しか
さっきから返してはいないのだが
玄関まで見送らずに
その場で見送った
炎屋敷から二人の気配が消えて
「…はぁーーっ」
その場に座ったままで
あげはがため息をひとつついて
やってしまったぁ…
今のは 流石にやってしまったよなぁ…
売り言葉に買い言葉みたいな
やり取りしにか過ぎなかったが
ついつい
つまらない意地を張ってしまったな…
やってしまった…
我ながら… 反省しなくては
「流石に、ちょっと…悪い事したかな、
言いすぎちゃった…。
でも、あれは杏寿郎が…、
あんな事を言うから…悪いんだし?」
悪くない 私は悪くない
そう 自分の行動を正統化してみるものの
やっぱり 言いすぎ…だよねぇ