第6章 無限列車にて 後編
どっちの気持ちも
痛いほど…良く分かるから
止めたい気持ちと止められない
気持ちが交錯する
俺は…どうしたら…… いいんだ
「あげはさんっ!」
そのどっちも出来なくて名前を呼んだ
「ごめんね、炭治郎君。
…君だって、重症なのに」
自分の命だって危ういのに
俺の傷なんてどうでもいいのに
今の こんな時に
「オイ!!あげる、
ギョロギョロ目ん玉は…もう」
伊之助はあげはの体を心配して
あげはを止めようとしていた
「動くと、お前だって…」
「大丈夫、私は、大丈夫だから…ね?」
よしよしとあげはが伊之助の頭を撫でた
「あげる、お前。
…死ぬんじゃ…、ねえーぞ?」
「その少年の言う通りだ、
今、動いたら…君も死んでしまうぞ?」
君もって事は
死ぬ気でいるな この人
「私より、先に死にそうな人は黙ってて。
今動いたら、…私が、死ぬ……
のは困るけど。今動かないと、
君が死ぬじゃないの!」
「あげはさんっ!あの…」
「ありがとうね。炭治郎君。
でも、大丈夫、死なないから、
私も…。煉獄君も」
「あげはさんっ、死なないで…くださ…いっ」
うん と返事をして
あげはが笑った
一方の炭治郎は今にも
泣きそうな顔をしていた
よいしょっとあげはが
杏寿郎の体を担ぐと
隠に体をサラシで離れないよう固定させる
シィイイイイッーー
雷の呼吸をして
その場から消えて行ってしまった
もう その姿は
どこにあるのかも 見えない…
「……三太郎」
その場で立ち尽くしたままの
伊之助が炭治郎の名を呼んだ
「…これで…、良かったんだよな…?」
と続けた 自分の行動が
正しかったのか炭治郎に確認していた
あげはさんは剣こそ強いが
女の人だ俺達が2人で押さえれば
ここに引き留めることもできたんだ
煉獄さんの望みを叶えるのであれば
俺達はそうすべきだった
「ああ…、伊之助。…合って…るぞ…」
自分の目から涙が溢れているのに気づいた
それも次から次に…
俺達はあげはさんの望みを
叶えてしまった
でもそれは 2人とも助かる
可能性もあるが
2人とも失う可能性もある
だから 伊之助は俺に聞いたんだ
良かったのかと…
「俺達には、信じるしか…できないよ」