第45章 蝶の跡は月夜に舞う
「でも、あげはちゃんが
お着物をあんまり持ってないって
知ったら、煉獄さんが凄い沢山の
お着物を贈ってくれそうよね?」
「そうなんだよね、普段使いのは
3枚ほどだけだから。家で
訪問着とか、色留袖って訳にも…。
でも、後2枚ぐらいは
普段着れるのが欲しいかも。
小紋か袖(つむぎ)の…使い分けできそうで
季節を選ばない柄のがいいかなぁ…」
そう蜜璃の質問に
あげはが返事を返して
「ねぇ、良かったら。
私の袖をあんまり通してない
小紋のお着物、着て貰えないかしら?
実家に置いたままになってるんだけど。
邪魔になるって、お母さんに
怒られちゃったの。
でも、持って来てもあまり
着る事もないし…。あげはちゃんが
着てくれるなら私も、お着物
だってしまわれてるだけよりいいもの」
「タンスの肥やしになってるって言うなら、
蜜璃ちゃんのお言葉に甘えちゃおうかな?」
そんな会話を蜜璃と交わしながら
あげはがたとう紙に包まれた
着物を一枚タンスから取り出して
その たとう紙の紐を解いて開くと
その中から一枚の振袖が姿を現す
振袖と言うだけあって
色も柄も普段使いの着物よりも
各段に存在感があって華やかな一枚だ
「あら、まぁ、素敵だわ!
とっても、可愛らしい振袖ね。
地の色が、ピンクと黄緑になってて」
「ああ、
蜜璃ちゃんの髪の色みたいな着物だけどね。
これは、元々カナエちゃんが成人式で
着るつもりで仕立ててた物だったの」
「まぁ、そうだった…のね。花柱…の
カナエさんって、
しのぶちゃんのお姉さんよね?
それに色もだけど、豪華で
華やかな柄ね。色々な花に、蝶で」
百花の花が咲き乱れる柄は
花柱だった カナエちゃんに
ピッタリのお似合いの柄で
その季節を問わずに
入り乱れて咲き乱れる花々の間を
蝶が飛び交っている
蝶の柄…