第45章 蝶の跡は月夜に舞う
そのまま台所で水を飲んで
蜜璃が眠っている部屋に戻った
先程のやり取りを思い出す
夢だった事にしてしまいたい…
悲しいかな 現実だけど…
「もう、寝よ…」
そう呟いて
もそもそと布団に潜り込んだ
あるようで
眠気は無かった
むしろ 目は冴えてしまっていて
ごそっと自分の火照りの残る
項にあげはが手をそっと伸ばして
その部分を自分の指先で
冷やすかの様にして
指を添えて押し付ける
私のここには 私の目にも見えない
杏寿郎にしか見えない
蝶が 1匹…
月夜の晩に ひらひらと
戯れの様にして 舞う蝶を
杏寿郎が捕まえて
私の ここに 閉じ込めたのだから…
ーーー
ーー
ー
そのまま横になって居る内に
知らず知らず 眠りに落ちていた様で
夜が明けて 朝が訪れていた
いつも 起床している時間になると
春日さんが起こしに来てくれて
中庭で炭治郎君と鍛錬をしているから
一緒に鍛錬をしないかと
杏寿郎が言っていると
伝えに来てくれたので
その春日の言葉を聞いた蜜璃が
あげはに対してある提案をして来た
「まぁ、懐かしいわ~。
昔を思い出して私も
煉獄さんに久しぶりに、
稽古を付けて貰ちゃおうかしら?
ねぇ、あげはちゃん、折角なんだし
あの隊服…でお稽古しましょ?」
隊服で稽古…
稽古着で鍛錬をしないで
普段が隊服で任務に当たるからと
不死川君とかは鍛錬も隊服でしてるって
前に本人から話を聞いた事があるけど
蜜璃ちゃんに持ってないなら
稽古着を貸そうかと声を掛ける前に
言われてしまった
でも 幸か不幸か今は
善逸君と伊之助君は居ないし
居るのは真面目な炭治郎君だけだし
私に隊服をくれた蜜璃ちゃんとしては
そのあげた隊服を着て貰いたい…って
考えるのは当然…だもんね
着る?あの隊服…
「タイツ…でも、いいかな?」