第45章 蝶の跡は月夜に舞う
「不本意だが、あげは。
君がそう言うなら…諦めよう。
だが、そうだな…、
なら数は増やさないが同じ場所に
ずっと重ねて付けてもいいと言う事だな?」
あくまで私の意思を尊重してる
意向を叶えるとでも言いたげではあるが
確かに…
全身に蝶々を沢山舞い踊らされても困るし
だからと言ってそんな目立ちすぎる様な
大きな蝶を付けられても困る
そして 今度は
とんでもない提案をして来たなこの人
同じ場所にずっと重ねて跡を残す…と言うのは
つまり…
同じ場所に紫斑(しはん)を
繰り返しつけられてしまっては
その紫斑がその内 色素沈着になって
消えない痣になってしまいかねない
「一体、何をお考えなのですかっ!!
杏寿郎は!そんな事をなさっては、
跡が残ってしまって、
消えなくなってしまいますからっ。
杏寿郎は、私の身体にどす黒いくすんだ蝶や
黄色い様な蝶を残したいと?」
「黒い蝶か…、それは頂けないな。
君の肌には赤い方が映えるからな」
あげはが頭が痛いと言いたげに
自分の額に手を当ててため息をついた
「ん?どうかしたか?
頭でも痛いのか?あげは」
「誰の所為にありますか?杏寿郎。
頭も痛くなります…っ。もう。
杏寿郎の御冗談は、
どこまでが御冗談なのか
私にはわかりかねますので。」
「俺はいつだって本気だが?」
そう 何食わぬ顔をして
杏寿郎が言って来て
「その方が余計に厄介にありますよ…」
「はははは。君はダメが多いな」
「いや、ダメだって言わざる得ない事を
貴方が言い出すからですよ?」
「なら、考えて置くといい。また改めて
君からの返事を聞くとしよう」
「いえ、この件に関してのお返事は
私からは…お返ししかねます…ッ」
「では。おやすみ、あげは。良い夢を…」
フェイスラインに掛る髪を彼の指が
すくい上げて頬に口付けを落とされて
杏寿郎から解放された
杏寿郎の冗談は兎に角心臓に悪い
「水…、飲んで落ち着こう…」