第45章 蝶の跡は月夜に舞う
微妙に会話がかみ合ってない気がするし…
眠れなくなるんじゃないかと
指摘しているのも
彼の耳には入ってない様で
彼がこちらに向けて来る視線に
段々と熱が込もって
来ているのが分かるから
さっきだって 唇を吸って来るような
そんな口付けをして来て居た彼に
口付けの主導権を握らせてしまって
果たして 良い物なのだろうか…と
あげはがそう思案していると
「残念だな。そうか、
口付けるのはダメなのか?あげは。
なら…君が、俺が眠れる様に。隣で
添い寝をしてくれたら眠れそうだがな…」
「それなら、
いつも通りにありませんかッ。
杏寿郎が、蜜璃ちゃんと今夜は
一緒に寝るといいって
私に言ったにあられますよ。
お忘れにありますか?
もう、私は…台所に用が
ありますので。行きますので」
そう言って彼に背中を向けて
歩き出そうとした時に
ギュッと後ろから
杏寿郎に抱きすくめられてしまって
「あの、杏寿郎…、放して…頂きたく」
「少しだけでいい、…こうして居たい…」
彼の腕に包まれて
彼の香りに包まれているのを感じる
「さっきまで、
素振りをしていたからな…。
匂うだろうか?そこまで汗を
掻いたつもりはないが、
汗臭いかも知れんな。
君は…、もう湯上りの香りが
薄れて来ている様だな。
石鹸の香りの奥から
君の自身の香りがして来てるが…な」
そう言って項の辺りに
彼の鼻と唇が触れるのを感じる
「嗅がないで…ッ、
頂きたくあるのですか?」
「自分でそう言って置きながら、
たった一晩でこの様だ。
自分でも情けない限りだがな…。
あげは、もう少しの間…
俺だけのあげはで居てくれ」
その時間を 欲しいと言われて
ぎゅっと自分の胸が
締め付けられるのを感じる
ギュウウと後ろから
抱きすくめられてしまって
「今だけ…でいい、そうしてくれ」