第45章 蝶の跡は月夜に舞う
ふふ こうして 目を閉じると
幼く見える…な 杏寿郎
余り焦らし過ぎても ダメだろうし
チュッとその唇に
自分の唇を押し当てると
チュッチュ…と
短い口付けを数回繰り返す
彼の唇を自分の唇で
挟んで軽く食みながら
薄目を開いて その表情を確認すると
薄っすらと薄目を
杏寿郎が開いているのに気が付いて
ぱちっとお互いの視線がぶつかると
ふっとその目が笑みに変わって行くのが
あげはの目には見えていて
身体を離そうとしたのを
背中に回された腕に阻まれてしまって
「あげは…ッ」
逆に唇を唇で食まれてしまって
そのまま 挟んで吸い上げられる
「んっ…、ぅ…んッ」
チュウ…チュ…と音をわざとらしく
立てられながら 吸われてしまうと
自然に声が零れ出てしまっていて
「んッ、…やっ、もう。杏寿郎…、
吸うのは…ダメにありますからッ」
「どうしてだ?
…吸われるのは嫌いか…?」
口付けの合間にそう言われて
不本意だと言いたげに
杏寿郎が返して来て
「その…、軽く触れる程度の…で、
お願いをしたいのですが…」
「何故だ?君は相変わらずに…、
注文が多いのだな。…よっと」
いつの間にか 中庭から履物を脱いで
杏寿郎が直接廊下に上がって来て
あげはの目の前に移動して来ると
「あ、あの…、杏寿郎…。鍛錬は…」
「素振りよりも、君の方が…眠気を俺に
運んで来てくれそうだからな。
で、話を戻すが…。
ここを俺に吸われると…、
そう言う気分になってしまうからか?」
「眠れなくて、杏寿郎は
素振りをなさってたのでありましょう?
その様な口付けばかりをしていたら、
眼が冴えてしまって
余計に眠れなくなってしまいませんか?」
「今度は俺の方から、
あげは、君にそうしたいが?」
「あの…杏寿郎、
私の話…お耳に届いておられます?」