第45章 蝶の跡は月夜に舞う
サァーっと
あげはの顔色が真っ青になって
もう この世の終わりって言う顔を
きっとその時に
私はしてたんだと思うんだけど
ニコニコと目の前の蜜璃が笑顔で
ね?と同意を求めて来て
この曇りのない瞳を見ていると
つい… つい…
うんと首を縦に振ってしまう自分がいて…
「う、うん…そうだね…」
それも 単にあの隊服を杏寿郎に
着て見せるだけじゃなくって
あれを着るだけで相当に恥ずかしいのに
それを着てる所を 杏寿郎に見られて
ただ 見られるだけじゃなくて
その隊服姿を 沢山
杏寿郎に褒められるって事?
って それどんな羞恥プレイなの?
褒められる だけじゃなくて
沢山 褒められる??沢山っ…
無理っ 無理無理 絶対無理だし…ッ
「あげはちゃん?私何か、悪い事を
しちゃったかしら?顔色が悪いわ。
でも、今日は、倒れたりしたんだし、
早めに休んだ方が良さそうね。
あげはちゃんは、頑張り屋さんで
皆のお姉ちゃんみたいな物だから。
偶にはこうして、あげはちゃんの事
甘やかしちゃいたくなっちゃう♪」
そう言って蜜璃が正座してる
膝に膝枕をする様に促されて
断るよりも先にあの持前の怪力で
強制的に膝枕をされてしまって
トントンと胸の辺りを叩かれて
寝かしつけようとされてしまう
でも今日は 本当に色々な事があったな
蜜璃ちゃんの膝の柔らかさと
下の兄弟がいるだけあって
そのトントンも絶妙だ…
私は 孤児だったから
自分の母親も姉妹が居たのかも知らない
医師である父には引き取られたが
こんな風に寝かしつけられる事なんて無かったし
懐かしい…と 感じる気持ちはないはずなのに
この 体温と感触は
心地良く 自分に染みて来るのが分かった
不思議と 瞼が重くなって行って
とろんとまどろんで来るのを感じる