第6章 無限列車にて 後編
そんなの許せない
納得…出来ないっ!
あげはが握りしめていた
拳から血が滲む
「だから、その強い人は…誰が
助けるの?って言ったじゃない!
助けてばっかりだって」
自分の命を賭してここにいる
全員を守ったとして
一人勝ちするつもりなの?
前々から
バカじゃないかって思ってたけど
やっぱり バカじゃないのさ!
ーそれも 大バカ!!ー
自分に出した
待機命令を解かないのも
私に邪魔をさせない為なんだろうけど
そんなの私には関係ない
彼が死んでしまえば
それを咎める者は誰もいなくなるから
眼前の猗窩座の肩越しに
後方からこちらへと
向かって飛んで来る
あげはの姿が見えた
ああ 全く…
来るなと命じていた はずなのに…
ほとほと 彼女は無茶な真似をする…
「煉獄君のバカっ!!!」
ヒュンッ ガキィンンンッーー
あげはの振り下ろした刀が杏寿郎の刀を
打ち込んで
更に頸の奥深くへと刃を押し進めた
女!!小賢しい真似をする!!
自分の背後にいる あげはに向かって
猗窩座が怒りの感情に任せて
肘を叩き込んだ
「きゃああああああぁっ!!」
あげはの体が
後方の遠くまで飛ばされて行くのが見えた
猗窩座が左手を握り拳を作ると
杏寿郎の頭を狙って潰しに来た
ガッとその手を自分の左手で掴んで
それを阻止する
夜明けがすぐそこまで 迫っていた
もう 時間がない
一刻の猶予も許されない
空が白んで行く…
焦りの色がそれまで
顔色を変える事のなかった
猗窩座に浮かんでいた
これほどの圧倒的な力の鬼にとっても
太陽の存在は脅威なのだ 怖いのだ
死 そのものなのだから
「ハァ…、ハァ…ハァ」
炭治郎は腹を抑え荒い呼吸をしながら
自分の日輪刀を探していた
あげはさんが受けた一撃は
恐らくだが発勁の様なもので
外傷はなくても
内臓にかなりのダメージを
受けているはずだ
あげはさんはしばらく動けない
俺が…やらないと 俺が…
朝日から逃れようとしている
猗窩座を杏寿郎は離さなかった
ようやく木の根元に落ちていた
自分の日輪刀を手に炭治郎は
伊之助に向けて叫んだ
「伊之助動け!煉獄さん達の為に、動け!!」