第6章 無限列車にて 後編
「この、闘気!お前か、杏寿郎!
素晴らしい!やはり…お前は
…素晴らしいぞ!杏寿郎!!」
魂ごと燃え上がる様な
闘気がうねりを上げているのを
肌で感じる…やはり
杏寿郎は鬼になるべき人間だ…
「これで、全て…終わらせる!!」
杏寿郎の言葉に猗窩座が
口の端を上げる
「いいだろう!来いっ!!」
瞬間的に猗窩座の闘気も膨れ上がって行く
「玖の型 煉獄!!!」
「破壊殺 滅式!!!」
杏寿郎の放つ炎が龍となり
猗窩座がそれを拳で迎え打つ
両者の放った大技が
ぶつかり合い周囲に大きな炎柱を作り
空へと昇って行く
爆風がこちらにまで押し寄せて来て
技の威力の凄まじさに
地面が震えていた
土煙が辺りを包んで視界を奪われる
一体中は…どうなっているのか?
少し離れてその様子を見ていた
炭治郎は土煙りの中に目を凝らす
「煉獄さんっ!」
少しずつ 土煙が晴れてきて
影が…見えた
薄くなっていく土煙の向こうに
杏寿郎の姿が見えた 刀を頭上に構えている
それに続いて鬼の影も見えてくる
左の頭部が削ぎ落とされて
左腕も千切れかけていて
かなりの深手を負っている様だった
そして そのすぐ近くで
待機していたあげはの顔が
青く一瞬にして変わる
「…ーーーっ」
その理由に炭治郎も息を飲んだ
猗窩座の腕が杏寿郎の
右胸のすぐ下の辺りを
貫いていたからだ
体を貫かれた杏寿郎が
小さな呻きと共に吐血する
「うぁああああああっーー!!」
炭治郎の叫び声がこだまする
「死ぬ、このままでは…死んでしまうぞ
杏寿郎!鬼になると言え!!」
懇願する様にも聞こえるような
鬼の叫びが響いた
「鬼になると言え!!」
その言葉を全力で否定するかの様に
杏寿郎がカッと目を見開いて
鬼を睨みつける
「俺は、炎柱、煉獄杏寿郎!!
俺は俺の責務を全うする!
ここにいる者は誰も死なせないっ!!」
「まだ、そんな戯言を!死ぬぞ?杏寿郎!」
一瞬 ここではない
堪らなく懐かしい思い出を
思い出していた 今は亡き…母上との
グッと強く右手で日輪刀を
握りしめた柄を振りかぶると
猗窩座の頸にその刃を押し込んだ
「ぐあっ!!」
「うぉおおおおおぉお!!」
腹の底から力を込めて叫び声を上げながら
更に奥へと刃を押し込んで通そうとする