天谷奴零に騙されたい【ヒプノシスマイク】【短編集】
第5章 碧棺左馬刻は優しい【甘々、シリアス】
一悶着あったが
結局左馬刻の家でお世話になることになった
母親にも伝えるとあっさりと引き渡された
左馬刻「手放せて清々したってことかよ……」
『大丈夫ですよ、これが私達家族なんです……』
左馬刻「おい」
『はい』
左馬刻「何か欲しいもんはあるか」
『え?』
左馬刻「食いたいもんでも何でもいい、俺様が全部叶えてやっからよ」
『そ、そんな!住まわせてもらえるだけでも有難いのに……』
左馬刻「それは家事をしてもらうってことで手を打っただろーが」
『そ、そうですけど!』
左馬刻「欲しいもんねぇのか?」
『うっ……それは』
左馬刻「お前はもっとわがままを知れ、俺様は簡単に見捨てたりしねぇからよ」
『!!……そうですね、じゃあ洋服を見に行きたいです!制服以外まともな服が部屋着しかないので……』
ほとんどが母親のおさがりで
高校生の自分が着るには派手すぎる物だった
左馬刻「わかった、つっても服何がいいかなんて俺は分かんねぇからな……一緒に行くぞ、金は出してやる」
『え!あ、ちょっと!』
左馬刻に腕を引かれて外に出た
制服姿の自分とアロハシャツの彼では
どう考えても釣り合っていない……
『あの……そろそろ手を』
左馬刻「あぁ?はぐれられたら困るからこのままでいい」
『そこまで子供じゃないですよ!』
左馬刻「それ、やめろ」
『?何がですか?』
左馬刻「その敬語だ敬語!タメでいい」
『で、でも!』
左馬刻「タメでいい」
『はい、じゃくてうん』
その後、2人で服を見て回って
カフェでご飯も食べた
初めて高校生らしいことをしたかもしれない
左馬刻「おい、チンタラ食ってんなよ」
口は悪いがちゃんと待っててくれている
歩く時も歩幅を合わせてくれている
こんな優しくされたのは初めてで
すごく戸惑ってしまう
左馬刻「お前、楽しくねぇのか?」
『え!?た、楽しいよ!』
左馬刻「じゃあなんで俯いてんだよ」
『そ、それは…こんなに優しくされたりしたの初めてだから』
左馬刻「!……おい、車呼ぶからちょっと待ってろ」
『え?あ、うん』
夕方になったから家に戻るのかと思ったが
乗り込んだ車は家とは別の方角に向かっていた
『ど、どこに行くの?』
左馬刻「言わねぇ、目つぶって待ってろ」
視界を遮られ目を瞑る
いつの間にか眠ってしまった
