第1章 梅の様に恋をする love affair.H
『…ふっ。貴様は今宵の宴も気がそぞろと見える。』
『えっ、いやっ。失礼致しました。』
『貴様に、我が所有物を掠め取られるとはな。』
『…ご、ご存知だったのですか?』
『俺を誰だと思っている?が誰を見ていたか、貴様が誰を見ていたか、など、ここに居る全員が知っている。』
『えぇっ、全員が!』
信長の言葉に驚きを隠せない男。
織田軍総大将の右腕で安土の世話焼きの男、秀吉は、信長の側で酌をしながらも、漸く通じ合った恋仲の姫の姿を視野に居れ、周りの男達を見張っていた。
『あの様に誰にでも笑いかける姿、さぞ心配であろう?
あやつは疑うということを知らぬ。真っ直ぐに信じ包んでいく。この世にあの様な汚れのない魂だからこそ、誰もが惹かれていくのだろうな。』
『…確かに。は、真っ白です。だからこそ守りを固めなければすぐに消えてしまうでしょう。』
『わかっているのなら、貴様の色以外に染まらぬように護るのだな。…貴様がの許嫁とはまだ認めておらぬが、ふっ。あやつの涙は見たくない。泣かせることだけはしないと誓え。』
『…っ!必ずや幸せに致します!有り難きお言葉!』
『たわけ。許嫁とは認めぬと言ったであろうが。』
『あっ、はっ。はい!…ですが、の笑顔を護ることをお誓い致します。』
『ふっ。…酌はもうよい。あやつを迎えに行け。あのような姿、…牙を隠した狼に囲われた兎のようだぞ?』
『え?あっ、あいつ!飲みすぎっ!』
※
『梅の花言葉?』
「そう。家康、知ってる?」
『忠誠心、清らかな心…でしたか?』
「さすが、三成くん。」
『どうせ、書物のお陰でしょ。』
「…あんなに綺麗だから、清らかなってのはわかるんだけど。なんで忠誠心なのかな?」
『なんだ。知らねぇのか?』
「なに、政宗はわかるの?」
『菅原道真公の逸話から…、だろ?』
『えぇ。さすが政宗様。』
「なに?菅原道真公、って太宰府の?」
『ほう、よく知っているな。小娘。』
「でも、梅との話しなんてあったの?」