第1章 梅の様に恋をする love affair.H
『梅を見ながらの花見酒もいいもんだな。』
「でしょ!…って政宗は、飲んでないじゃん!」
『あの梅を見たら、茶も進むってもんだ!』
『…ぼーっとしてるように見えていたが、よく見つけたもんだ。誉めてやらねばな。』
『みっ、光秀さん!それって、誉めてます?けなしてます?』
『両方でしょ。…でも、よく見つけたね。あの梅の木。』
「家康ぅ。もう、光秀さんから守ってくれるんじゃないの?
…梅、綺麗だよねぇ。最近、暖かくなってきたじゃない? 鳥の鳴き声が聞こえるようになって、どこからかって探したら、見つけたんだ!」
『へぇ。抜けてるように見えてたけど、案外あんたも季節の移り変わりとか気にしてるんだね。』
「なっ!失礼ね!ここは、私が居た世より季節の変わりが鮮やかだし自然と気になるの!」
『ほぅ、安土の姫君は随分とお暇とみえる。』
「なっ、何言ってるんですか。光秀さん。簡単な政務の事教えてもらったりしてるじゃないですか!三成くんには崩し字の手習い、家康には弓と乗馬。政宗には料理。…私だって暇じゃないんですぅ!」
『えぇ。様は熱心に手習いをされておりますよ。飲み込みもお早く、素晴らしいです!』
「ありがとう!三成くん!」
『ほぅ、それはそれは。熱心な姫君で感心致しますな。』
「まぁた!馬鹿にして!」
『まぁまぁ、。ほら、甘酒作ってきてたぞ。
好きだろ?』
「政宗、ありがとう!わぁ、美味しそう。」
『色気より食い気…』
「家康、何か言った?」
『くくっ。まぁまぁ、落ち着け。安土の麗しき姫君との花見酒だ。乾杯といこうじゃないか。』
「もう、みーんな馬鹿にして。」
『ふふっ。さぁ、様。乾杯と致しましょう。』
【500年後の未来からやって来た。】
そんな摩訶不思議な事を話した女は、安土城城主の信長を助け、戦国の世では珍しい無垢で真っ直ぐな思いをもち、信長の寵愛を受け武将達にも可愛がられ護られていた。
そして今夜も、信長の側近で開かれた宴に溶け込んでいる。彼女の周りには牙を隠した四人の武将達。
ぴったりと彼女の両隣に座る、政宗と家康。
彼女から一番近い柱に背を預け、コロコロ変わる表情を楽しむ光秀。
光秀にぎこちなく酌をしながら、柔らかい眼差しを向ける三成。安土の麗しき姫君の周りは、今宵も賑やかであった。