第1章 梅の様に恋をする love affair.H
「光秀さん!恥ずかしいから!」
『光秀、うるさいぞ。』
『許嫁となると、怖いものだな。』
『ったく。さぁ、行くぞ。信長様失礼致します。』
秀吉は、深く頭を下げるとの手を引き歩きだした。
※
『寒いか?』
城から御殿までを二人は手を繋ぎ寄り添って歩いていた。
「打ち掛けが厚いから大丈夫。」
『…綺麗だ。よく似合う。』
「ありがとう。」
『俺もそのくらいの打ち掛けを渡せるだけの人間にならなきゃな。』
「…今のままでいいよ。」
『認めてもらわなきゃならないからな。』
「あのね。秀吉さん、」
『ん?』
「私、祈ったの。梅の木みたいに飛んでいけたらいいのにって。秀吉さんの側に、行きたいって。でも、私は待ってるだけだった。無事に帰ってくることを祈るしかなかった。」
『。』
「でもね、帰ってきてくれた。命を亡くさずにもどってきてくれた。…それで十分なんだよ。一緒に生きていきたい。側にいさせて欲しい。それだけなんだもん。」
ざぁ、っと強い風が吹いて、どこからか梅の香りがした。
『約束する。俺の生きる意味を与えてくれたお前のもとに戻るって。…だから、一緒に生きてくれ。これからも、永久に。』
「うん!」
秀吉は、を横抱きにして歩き出す。
首もとに顔を埋めたは、秀吉の首筋に食むようにキスをした。
「あとで、同じ場所に印をつけて。」
『あぁ。わかった。』
会えなかった時間を埋めるように溶け合う二人は、丸二日秀吉の自室から出てくることはなかった。
そして、そのお陰で祝言の口実が出来たのは、また別のお話。
fin