第1章 梅の様に恋をする love affair.H
『おい、はいないのか?』
祝いの酌と言葉を立て続けに受けていた秀吉が、政宗に声をかける。
『…さぁな。聞いてみればいいんじゃねぇか?』
この時、政宗は既に信長と光秀の企みを知らされていた。秀吉が
と会う暇がないように、いくらか政務に手を抜き、秀吉に皺寄せが向くよう協力していたのだった。
そして既に政宗は、刀と武具の褒美を受けていた。
『具合でも悪いのか…。俺、あとで見てくる。』
『主役が抜け出せるわけがねぇだろうが。』
『だが、この宴にまで来ていないとなると、余程だぞ?』
きょろきょろと周りを見渡しながら、を探す秀吉の姿を光秀は肩を揺らしながら眺めていた。
『はぁ、悪趣味。』
家康がため息を付く。その時だった。
ぱちん。
信長の鉄扇が音を立てた。
すると、それまでの賑やかさが嘘のように静まり返る。
『秀吉。』
『はっ。』
『此度の勝ち戦。無血であり、兵力も武力も落とさず持ち帰った勝利。大義である。』
『はっ。有り難き幸せ。』
『褒美を与えるが…、なにか欲しいものはあるか。』
『そんな、滅相もありませぬ。お褒めいただけたことが褒美なれば。』
『はぁ、…全く貴様らは。』
『は?今なんと?』
『こちらの話だ。光秀、此度の褒美の目録を読め。』
『はっ。』
光秀は、信長の側に寄ると渡された目録を広げ読み始めた。
『…豊臣秀吉へ勝ち戦褒美。
許嫁となること、以上。』
かばっ。
頭を下げていた秀吉が、信長に顔を向けた。
『お、御館様…』
『秀吉、これが褒美だ。…開けよ。』
秀吉が鉄扇の先の襖に体を向けた。
襖が静かに開くと、そこには豪華な打ち掛けを纏い着飾ったが立っていた。
『…っ。。』
「秀吉、さん。」
秀吉は、宴の席で信長の御前であることを忘れたように立ち上がり、のところに駆け寄った。
『なのか?』
「…そうだよ。」
『すげぇ、綺麗だ。…会いたかった。』
「私も。ねぇ、秀吉さん。」
『ん?』
「おかえりなさい。」
『…あぁ。生きて戻ってきた。ありがとう、。』
秀吉がを抱き締め…、ようとした時、低い声が上座から舞い降りた。
『秀吉、戻れ。』
『「あっ。」』