第6章 甘い罠◎
『ん…』
朝日が眩しくて目を覚ます。
『泉智ちゃん、おはよう』
声のする方を見ると、傑さんが椅子に腰掛け新聞を読んでいた。
『朝ご飯、食べなさい』
ニコッと微笑まれてドキッとしてしまう。
"そうだ・・・私この人と…"
そう考えると恥ずかしくて赤面してしまう。
しかし、傑さんの言っていた、人と身体を重ねることで穢れが薄まっていくというのは間違いではない気がする。
私の新しい記憶は、あのサイドポニーテールの男ではなく、傑さんに塗り替えられている。
人肌を感じ、気持ち良く、幸せに包まれるひと時だった。
またあの感覚に包まれたい…そう思える。
『傑さん、本当にありがとうございます。』
『ん?何のことかな?』
『傑さんのおかげで、穢れが薄まった気がします。』
『それは良かった。
不安になったり、自己嫌悪に陥りそうになったら、誰かに抱いてもらいなさい。
泉智ちゃんが良いなら、私はいつでも大歓迎だよ』
傑さんの微笑みに、恥ずかしくなり俯いてしまう。
『あっ…ありがとうございます。』
朝ご飯を食べる。
『ここ、ジャムがついてるよ』
パンを食べた時に、唇の端にジャムがついてしまったようだ。
次の瞬間、傑さんは人差し指でそのジャムを取り、自身の口へと運ぶ。
『うん、美味しい』
そう言うと、人差し指を私の口へと入れる。
親指と人差し指で私の舌を掴んだり、私の口内を掻き回す。
『んんっ…』
傑さんとの昨日の情事を思い出し、赤面してしまう。
『また私とセックスしたくなったかい?』
そう耳元で囁かれ、私は恥ずかしさのあまり机に突っ伏してしまった。
『すまない。君の反応がおもしろくてつい…ね。』
そう言いながら私の頭を撫でてくれる。
チェックアウトし、駅で傑さんと別れる。
傑さんと一緒にいた間、とても楽しい時間だったが少し引っかかることがあった。
『あれだけの事したのに、私のこと好きとか言わないんだ…』
"私に色んなことがあったから気を遣ってくれたんだよね…感謝しないと…
でも、私傑さんの事全然知らないや…"
そんな事を考えながら帰路につく。
『あの女とどうだった?』
『最高だったよ、久しぶりの女の身体は』
『そうじゃなくて…作戦は上手くいきそう?』
『安心しろ。順調に進んでるよ、真人』