第6章 甘い罠◎
『ごちそうさまでした』
店を出て、傑さんにお礼を言う。
"全部奢ってもらっちゃった…。
しかも、今日一度も財布出してない…"
『今日もとても楽しくて幸せな一日でした。
嫌な事もありましたが、傑さんのおかげで前を向いて進んでいけそうです。
本当にありがとうございました。』
『それは良かったよ。
私もとても楽しかった。またデートしよう』
傑さんは今日一番の笑顔で言ってくれた。
『傑さん、今度は私が傑さんに…』
ーガバッー
突然傑さんに強く抱き締められる。
『?!?!』
『悪いね…驚かせてしまって……
さっき話した件だけど、私を君の悪い思い出を上書きする一人にしてもらえないか?』
傑さんに抱き締められたまま、耳元でそっと囁かれる。
『えっ?!』
『ダメ…かな?』
傑さんが手に持っていた何かを私に見せる。
"◯●タワーホテル 675号室…
…えっ?!これホテルのルームキー…?"
『会えば会うほど君を好きになり、話せば話すほど君を自分のモノにしたいと私の欲が止まらなくてね…
今夜だけでいいんだ。私だけを見ていて欲しい』
『でも私、そういう事は以前の一度だけで・・・』
『私は君にテクニックを求めているわけじゃない。
少しの間でいいから君を独り占めしたい、それだけなんだ』
『でも・・・私ごときで傑さんが満足できるとは思えないんです・・・』
『私は満足したいわけじゃない。
君が言う穢れを少しでも綺麗にしたい』
『でも・・・』
"言い訳が出てこない…"
『…?
同意してくれた、ということでいいね?』
"この人に全てを委ねてみよう。
私の穢れた身体が少しでも綺麗になるのならば…"
『・・・はい。』